掘削艇の操作盤が、恐怖の舞台装置になる
『MOLE』は、戦後に造られた巨大掘削艇を操るシングルプレイヤーの心理ホラーだ。プレイヤーはナビゲーターとしてスラヴの地底へ降り、故障する機構を直しながら、死者の声と艇内に残る記憶を追う。乗組員の姿はなく、呼びかけてくるシグナルだけが進路を示す。何が起きたのかを外から眺めるのでなく、沈黙した機体を生かし続ける手順の中で、失われた過去へ近づいていく構図がある。
公式説明が掲げるのは、複雑なシステムの操作、物語に組み込まれた謎解き、そして精神をすり減らしながらさらに深く潜ることだ。掘削艇は背景のセットではなく、物語に触れるための装置として置かれている。暗い通路や不穏な音だけで怖がらせるのではなく、機体の仕組みを理解し、必要な操作を選ぶことが緊張の一部になる。艇が進むほど「この先に何があるか」と同時に、「この機械はどこまで保つのか」も気になってくる。
説明から受け取れるのは、謎解きが単独のパズル集ではなく、信号や乗員の消失、記憶の断片を結び直す道筋になっていることだ。公式情報には探索の自由度や分岐数までは示されていない。物語を自分の選択で分岐させたい人は、評価の高さだけからそこを期待しない方がいい。
手順を覚えることが、没入にも摩擦にもなる
レビューには、アイテムを一つずつ操作する感触を面白さとして挙げる声がある。好評レビュー(ID: 235420728、更新日: 2026-09-16)は、「アイテムの使用を一つ一つ操作しなければならない点もゲーム性があっておもしろかった」と書く。便利な一括処理より、手を動かす段取りそのものを楽しめる人には、操作盤を扱う時間がこの艇に乗り込む感覚を支える。
ただし、手順を踏むことは常に心地よいわけではない。別の好評レビューは謎解きやパズルが多く、慣れるまでは苦労したものの、慣れると進みやすくなったと述べている。何を試すべきかを自分で探り、機構の扱いを覚える過程があるため、物語だけを途切れず追いたい人には操作が足止めに映る可能性がある。恐怖演出にもジャンプスケアや追跡場面があるとの報告があり、雰囲気を味わうだけの静かな散策とは違う。
Steamの評価ラベルは「Overwhelmingly Positive」。それでも好評側の声が褒める点は一枚岩ではない。あるレビューはホラーというよりSF・サスペンス寄りの物語を推し、別のレビューは演出や仕掛け、機内のレトロフューチャーな意匠を印象に残る要素としている。恐怖の強さだけで評価するより、謎が解けていく構成や、異様な機械を自分で扱う感触に惹かれるかが入口になる。
一本道と陰鬱さを受け入れられるか
低評価の日本語レビュー投稿者(ID: 232561929、更新日: 2026-09-11)は、「完全な一本道。陰鬱な雰囲気ゲー。独特な雰囲気はちゃんとあって、そこは好き。」と評している。一本道であることは、選択を重ねて何通りもの結末を探す遊びを期待する人には物足りなさになりうる。一方、同じ声が独特な雰囲気を好いているように、作品の狙いは分岐の多さより、暗い世界と物語を一定の流れで深く進むところにあると読める。
宗教的な世界観も明確な好みの分かれ目だ。公式説明は狂気や信仰を主題に掲げ、レビューにも宗教的な題材への注意がある。重苦しい空気や信仰を物語の中心に置いた作品を避けたい人には、評価の高さだけでは相性を補えない。また、低評価の投稿者一人は、日本語化を評価しつつ、途中で日本では馴染みのない慣習を前提にした謎解きに出会ったと報告している。全員が同じ箇所で困るとまでは言えないが、詰まったら答え合わせをする可能性は頭に置いてよい。
機械の奥へ、物語ごと潜りたい人へ
本作が合うのは、一本道の物語を自分の操作で進め、機体の仕組みを確かめながら不穏さを受け止めたい人だ。好評レビューには、物語や演出に引き込まれ一気に最後まで進めたという声がある。反対に、自由な探索、複数ルートの攻略、軽快なテンポを優先する人には、短めで一本道という指摘が気になるだろう。シングルプレイヤー作品なので、誰かと相談しながら遊ぶことを前提に選ぶ作品でもない。
購入を決める前に想像したいのは、怪物の強さより、暗い艇内で機械を扱い、手がかりをつないで先へ進む時間だ。そこで惹かれるなら、狭い場所と陰鬱な物語は欠点ではなく、逃げ場のない掘削艇を形づくる条件になる。逆に、複雑な操作を早く済ませて物語だけを読みたいなら、評価ラベルが示す好評さと自分の好みは分けて考えたい。






