Cairn

Cairn

開発: The Game Bakers発売: The Game Bakers¥3,400

PlayNext レビュー

崖を登るとは、どういうことか。足を踏み外せば死ぬ。そのシンプルな事実が、『Cairn』のあらゆる体験の根底にある。『Furi』で反射神経を削り取るような戦闘を作り上げ、『Haven』で穏やかな二人の逃避行を描いたThe Game Bakersが、今度は「孤独な登山家の生存」をテーマに選んだ。主人公のアーヴァは、前人未到の頂・マウント・カミを目指して壁面に取り付く。ゲームパッドの左右トリガーがそれぞれ左右の手に対応し、岩肌を掴む感触が指先まで伝わってくるような、生々しい操作感覚——本作は「クライミングシミュレーター」と呼ぶには物語性が強く、「アドベンチャー」と呼ぶには肉体の負荷が重い、唯一無二のジャンルを切り開いている。 ## ルートという名のパズル 壁面は一本道ではない。アーヴァが次に掴む岩を自分で選び、ピトンを打ち込む位置を決め、ロープの張り方を判断する。この連続した意思決定こそが『Cairn』の謎解きだ。「あそこのホールドに届くか」「スタミナが尽きる前に次の足場まで辿り着けるか」——頭の中で3次元の経路を組み立てながら手足を動かす感覚は、ブロックパズルや脱出ゲームとはまったく異なる身体的な思考を要求する。 装備の管理も判断の連続だ。ピトンの本数は限られており、使いすぎると後半に詰む。アンカーを打つか、ノーロープで突っ切るか。リスクとリソースのトレードオフは、RPGのリソース管理とは違って「失敗したら即死」という緊張感のもとで行われる。*Subnautica* が海の未知を資源制限で表現したように、本作は山の恐怖をギアの枯渇で表現している。 ## ボスとしての山 『Cairn』にはボスキャラクターが登場しない。しかしマウント・カミそのものが、プレイヤーに立ちはだかる最大の敵として機能している。天候が変わる。ルートが行き詰まる。スタミナゲージが底をつく。山は演出的に「襲いかかってくる」のではなく、静かに、しかし確実にアーヴァの余力を削ぎ落としていく。 この感覚は *Getting Over It with Bennett Foddy* に近い残酷さを持ちながら、あの作品ほどの理不尽さはない。死亡時のペナルティは直前のキャンプ地への送還で、ゼロリセットではなくセクション単位のやり直しになる。「いつでもセーブ可能」という仕様も相まって、ストレスより達成感の方が上回るバランスに調整されている。頂上付近の最終セクションに差し掛かったとき、プレイヤーは山に対して確かな「打倒感」を覚えるだろう。長い時間をかけて積み重ねてきた一手一手が、その瞬間に意味を持つ。 ## 繰り返しプレイの新鮮さ 一度クリアした崖は、二度目には異なる顔を見せる。ルートを知っているからこそ、今度は別の経路を試したくなる。ピトンを節約しながら登る縛りプレイ、スタミナ切れギリギリのスピードラン——本作の地形はプレイヤーが自由にルートを引けるように設計されており、最適解が一つではないことが繰り返しの動機になっている。 難易度調整オプションも柔軟で、スタミナ消費量やセーブ頻度を変えることで、カジュアルな観光登山からシビアなサバイバルまでスペクトラムが広い。*Celeste* が難易度補助システムで「登ること」の意味を変えたのと同様に、『Cairn』も一人ひとりの体力と胆力に合わせて山の高さを変えてくれる。ただし、リソース管理の緊張感を最大に味わいたいなら、デフォルト設定での一周目を強く推奨する。 ## 頂上から見える景色と余韻 アーヴァが何を求めてこの山に挑むのか。物語は声高に語らない。登山の合間に断片的に浮かぶ回想、拾い集めたメモ、頂上で起きること——すべてが静かに積み重なり、プレイヤー自身の解釈に委ねられる。*Shadow of the Colossus* が巨像を倒すたびに問いかけを深めたように、『Cairn』は岩を一つ登るたびに「この挑戦の代償は何か」という問いをさりげなく提示し続ける。 一周のプレイ時間は8〜12時間程度と、昨今のインディーゲームとしては適切なボリューム感だ。ただし注意点もある。操作に慣れるまでの序盤は、コントローラーの左右トリガーを使い分ける独特の入力体系に戸惑う場面があるかもしれない。また、閉所恐怖感に近い「落下への恐怖」が視覚的に丁寧に演出されているため、高所恐怖症の人は覚悟が必要だ。逆に言えば、それだけリアルに「登っている」感覚が作られているということでもある。 ¥3,400という価格は、この体験密度に対して十分に見合っている。爽快感で消費するゲームではなく、じっくりと向き合い、山と自分の対話を楽しむゲームだ。一手ごとに思考し、一歩ごとに覚悟を決める——そういう時間をゲームの中で過ごしたいと思うなら、アーヴァとともにマウント・カミに取り付く価値は十分にある。

プレイヤーの声

👍プレイ時間: 33時間

カミゲー。 ここまで緊張感、達成感を味わえるゲームは中々無い。ソウルライクとは違った緊張感が欲しい方へ。 ルート選択やピトン位置を適当にやると後悔することになるのでめっちゃ緊張する。バックパックのリソース管理も好き。 景色もとてもきれいなのでフォトモードが捗る捗る。 ちょっと気になったのは料理時に水入りボトルを使った場合、別オブジェクトとして生成されたりボトル自体の内容が変わるのだが、分かりにくい。結構資源がシビアなのでもう少しわかりやすいと良かったかも。 相棒の扱いにドン引きするのはそれはそう。

👍プレイ時間: 24時間

まさにプレイヤーと共に登っていくゲーム。 キャラクターのステータスや能力が強化されるわけでもないのに登る技術が成長していく喜び。 最初の煩わしさも最後にはまた二周目を遊びたくなるほどの楽しみに変わる。 そして一つの映画を見終わったかのような感動的なストーリー。 さぁ、君もカミに挑もう。

👍プレイ時間: 241時間

主人公アーヴァの葛藤は終盤の断念して下山するか?を、 苦労して登った末に選択して見ないと納得できない設計なので 満足度が思ったより高くない結果になる事はあると思います。 未踏峰の攻略は最終目的として山の景観や生活している人に 思いを馳せるのが好きな人にはとてもお勧めできる作品です。 完成度はとても高いですが説明不足な所は否めなく DLCに今後期待したい所は大きいです。 労働の対価が少ない事へ価値を見出せる人にも強くお勧めします。 是非一度登ってみて下さい。

出典: Steam ユーザーレビュー

スクリーンショット

Cairn screenshot 1Cairn screenshot 2Cairn screenshot 3Cairn screenshot 4Cairn screenshot 5Cairn screenshot 6

似ているゲーム