
インフィニティニキ
Infinity Nikki
開発: Infold Games発売: Infold Games無料
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
「コーデを集めながら世界を救う」という一文で片付けてしまうには、あまりにももったいないゲームだ。インフィニティニキの核心体験を一言で表すなら、「着替えることが冒険の手段になる」という、これまでのオープンワールドゲームには存在しなかった感覚にある。武器を装備するように衣装を選び、その衣装が持つ固有の能力でギミックを解いたり、新たなエリアへのアクセスを解放したりする。ファッションゲームとアクションアドベンチャーの融合は過去にも試みられてきたが、ここまで自然に両者を一体化させた作品は見当たらない。
操作感は驚くほど軽快だ。ニキはマーベル大陸の広大なフィールドを走り、ジャンプし、滑空する。UE5で構築されたグラフィックスは花びらが舞い散る平原から、夜空に輝く水晶の渓谷まで、どこを切り取っても絵になるビジュアルを提供しており、移動しているだけで視覚的な満足感が得られる。パルクール的な動きは『原神』のそれと近い設計だが、インフィニティニキはコーデ切り替えという独自の行動選択肢を常にプレイヤーに意識させる点が異なる。「あのコーデに換えれば滝を登れる」「風のコーデなら高い崖から滑空できる」という発見が探索に積み重なり、コーデ収集そのものがパズルの答えを揃える行為に変わっていく。
コーデの入手手段はゲーム内クラフト、フィールドの宝箱、ストーリー報酬、そしてガチャ(スティラ紡ぎ)の四種類に大別される。ガチャが存在する以上、基幹部分が無料プレイ設計であることは念頭に置く必要があるが、メインストーリーとメインコンテンツをクリアするだけなら課金圧力は想定より低い。フィールドに散らばる収集要素や称号コンテンツ、リズムゲーム的な小イベントなど、やり込み要素の密度は相当で、コーデコンプを目指さなければ数十時間は無料で十分に楽しめる。
サウンドデザインも作品の雰囲気を高める大きな要素だ。BGMはオーケストラと民族楽器を組み合わせた壮大なスコアで、国ごとに音楽のカラーが変わる。戦闘ではなくコーデ発動にエフェクト音と演出が用意されているため、ドレスアップ行為そのものが気持ちいいフィードバックループを形成している。ニキがコーデを纏う瞬間のカットインは何度見ても飽きない。
ストーリーはニキとモモが「スタイリスト」として、分断されたマーベル大陸の謎と向き合う旅路を描く。各国に固有のストーリーラインがあり、大陸全体を覆う過去の悲劇と現在の脅威が少しずつ明かされていく構造だ。低年齢層向けに見えてストーリーの根底には喪失や贖罪のテーマが流れており、中盤以降は予想外に重厚な展開を見せる。ネタバレは避けるが、コーデ収集ゲームとして始めたプレイヤーがいつの間にか世界の謎に引き込まれているのは、脚本の設計が機能している証左だ。
比較対象として真っ先に挙がるのは『原神』だが、戦闘に比重を置く原神とは正反対のゲームデザインだと言ってよい。インフィニティニキに戦闘らしい戦闘はほぼ存在せず、敵を倒すよりコーデで環境に働きかけることがメインの動詞になる。探索の文法は似ていても、求められる体験は全く別物だ。また、着せ替え要素という観点から同社の過去作『ミラクルニキ』や『ショータイムニキ』と比較する向きもあるが、それらが2Dカードゲーム的な設計だったのに対し、インフィニティニキは3Dオープンワールドで全面的に作り直された次世代作であり、シリーズ既存ファン以外でも入口として最適だ。
プレイ時間の目安としては、メインストーリーとサブクエストを一通りこなすだけで40〜60時間は優に超える。フィールドの収集物をコンプしてコーデ全種を揃えるエンドコンテンツを目指すと、200時間を超えるコンテンツ量がある。定期的なシーズンアップデートで新エリアや新コーデが追加される運営型ゲームのため、長期にわたってコンテンツが補充される設計になっている。
率直な注意点も述べておく。ガチャの存在は事実であり、期間限定コーデへの課金誘導は定期的に発生する。「このドレスが欲しい」という欲求をゲーム側が巧みに刺激する仕組みになっているため、課金管理が苦手な人は注意が必要だ。また、ロード時間とオープンワールドの広大さ由来のやや単調な移動は、アクションゲームとしてのテンポを求めるプレイヤーには物足りなさを感じさせるかもしれない。ストーリーは女性主人公とファッションを中心に据えているため、テーマへの共感がゲームの楽しさに直結する部分も大きい。
こういう人には強くおすすめしたい。オープンワールド探索は好きだが戦闘が苦手という人、ファッションやキャラクターカスタマイズに強い関心がある人、原神や天元突破などを楽しんだが次の一本を探している人、そして純粋に美しい世界をのんびり歩き回りたい人だ。逆に、白熱した戦闘を求める人、ガチャや課金要素を一切排除したゲームが好みの人、あるいはストーリーのテイストが肌に合わないと感じる人には他の選択肢を勧める。無料で入手できるゲームである以上、試しにダウンロードして最初の数時間を体験してみることに失うものはない。そのうちの何時間かで、着替えることが冒険そのものになるというこのゲームの感覚が自分に刺さるかどうか、はっきりわかるはずだ。
スクリーンショット











