
僕のヒーローアカデミア ULTRA RUMBLE
MY HERO ULTRA RUMBLE
開発: Byking Inc.発売: Bandai Namco Entertainment無料
PlayNext レビュー
「個性」を持つキャラクターがぶつかり合う——そのコンセプト自体はシンプルだが、『僕のヒーローアカデミア ULTRA RUMBLE』が実現しているのは、アニメのあの瞬間を自分の手で再現できるという、ファンにとっては抗いがたい体験だ。3人1組のチームが8組、計24人でバトルロイヤルを戦うこのゲームは、フォートナイトやApex Legendsと並ぶバトロワジャンルの一本でありながら、「キャラクターゲーム」としての色がきわめて濃い。デクの空中ダッシュ、爆豪の爆破推進、轟の左半身から放たれる氷壁——それぞれの動きが原作の文脈を帯びたまま操作系統に落とし込まれており、ゲームとしての機能と、「キャラクターとして動く」という感覚が奇妙なほど噛み合っている。
## バトルロイヤルの文脈における「個性」の設計哲学
バトルロイヤルというジャンルにおいて、キャラクター間の能力差は常に議論の種になる。公平性を担保するために全員を同じ武器を使う存在にするか、差別化のために個性的なスキルを持たせるか——この二項対立に対し、本作はかなり大胆な答えを出している。キャラクターごとに「個性」は完全に異なり、プレイの流れそのものが変わる。
近接特化のキャラクターは接敵手段を持ちながらも遠距離で圧倒的に不利だし、轟のような遠中距離型は空間制御が得意だが乱戦に放り込まれると脆い。チームの構成がそのまま戦略の幅を決定する構造であり、「誰でも同じことができる」ではなく「自分のキャラクターでできることをやる」という設計になっている。
この設計の帰結として、チームの役割分担がきわめて重要になる。サポート型のキャラクター(例えばセメントスやミッドナイト)は、単独では勝ちを引き寄せにくいが、チームに組み込まれると戦況を大きく動かす。「強キャラ」の概念はあるにせよ、チームシナジーが機能したときの破壊力は別軸で存在している。難易度という観点では、自分の使いたいキャラクターと、チームが必要とする役割が一致しないと苦しいという構造上の制約が生まれやすく、そこが本作のユニークな難しさでもある。
## フォートナイト・Apex と何が違うのか
バトロワジャンルの巨人と比較したとき、本作が明確に異なる点が三つある。
ひとつは「武器に依存しない戦闘」だ。フォートナイトもApexも、最終的には拾った武器の性能が勝敗に直結するフェーズが存在する。本作にもアイテムは存在するが、メインの攻撃手段はあくまでキャラクターの個性スキルであり、「いい銃を拾えなかったから負けた」という体験が起きにくい。これはハクスラやルートシューター的な運要素を嫌うプレイヤーにとっては明確な利点になる。
ふたつめは「移動の気持ちよさ」にある。デクの高速空中移動、爆豪の連続爆破による縦の機動力、トゥワイスの分身活用——これらの移動表現はApexのキャラクタームーブメントより荒削りだが、「アニメのシーンを再現している感覚」という点では突出している。地形を利用した縦軸の戦闘はフォートナイトの建築とは全く異なる方法論でマップの立体性を活かしており、独自の爽快感がある。
三つめは「プレイ人口と運営の非対称性」だ。フォートナイトやApexと比較したとき、本作のプレイヤー数は日本では一定の規模を保っているが、グローバルではかなり少ない。マッチングが成立しやすい時間帯とそうでない時間帯の差が大きく、深夜や早朝はロビーが埋まるまでに時間がかかることがある。ここは率直にデメリットとして挙げておく必要がある。
## このゲームが刺さる人、刺さらない人
本作が最も輝くのは、原作のファンであることが大前提だ。「あのキャラクターを動かしたい」という動機がなければ、バトルロイヤルとしての完成度はApexやフォートナイトに一歩譲る。スキルの深度、マップのバリエーション、メタの更新速度——それぞれを単独で評価すれば、より洗練された競合タイトルは存在する。
一方で、原作への愛着がある人間にとって、本作はかなり誠実に作られている。キャラクターの動きは原作の文脈と乖離しておらず、声優陣のボイスも豊富で、試合中に飛び出す台詞の一つ一つがシーンの記憶を呼び起こす。バトロワに慣れていない人でも、好きなキャラクターを動かすことを入口にして徐々にゲームの構造を理解できる設計になっており、間口の広さは評価できる。
無料であることも大きい。課金要素はコスチュームやエモートに限られており、ゲームプレイに直接影響する有料要素はない。「ちょっと触ってみたい」という入り方ができるのは、IPゲームとしての正しい選択だと思う。ただし、新キャラクターの追加が運営の収益に直結するため、今後のロードマップがIPの人気と運営コストの綱引きに左右されるリスクは意識しておく必要がある。
「ヒロアカのキャラクターを自分で動かす」という欲望に素直に応えてくれるゲームだ。それ以上でも以下でもないが、その一点においては、今のところ代替が存在しない。
スクリーンショット











