
黒神話:悟空
Black Myth: Wukong
開発: Game Science発売: Game Science¥7,590
PlayNext レビュー
西遊記という物語を知っている人間は多い。孫悟空、三蔵法師、豚八戒、沙悟浄——日本でも漫画やアニメで何度も翻案されてきた古典だ。だが『黒神話:悟空』が描くのは、その「後日談」である。斉天大聖・孫悟空はすでに死んでいる。プレイヤーが操る「天命人」は、散り散りになった悟空の六根を集めるために旅に出る。物語の入口からして、一般的なヒーロー譚とは真逆の構造を持っている。英雄になるための旅ではなく、英雄の残骸を拾い集める旅。その静かな悲哀が、このゲームの全編を貫いている。
## 剣戟の手触り——ソウルライクとは似て非なるもの
戦闘システムだけ切り取れば、「中国版ソウルライク」という評が出回るのも理解できる。ボスが強く、回避が重要で、死に覚えゲーの側面がある。しかし『黒神話:悟空』はダークソウルでもエルデンリングでもない。最大の違いは「変化」の概念だ。
天命人は戦闘中に複数の「変身」を駆使できる。倒した敵の姿に化けて特殊技を使う「術」、棍棒に纏わせる「法術」、そして場面を支配する「定身術」——これらを組み合わせる爽快感は、ソウルシリーズの「慎重な立ち回り」よりもはるかに攻撃的で派手だ。ダークソウルがチェスなら、こちらは格闘ゲームに近い。棍術の三段階チャージ攻撃の「重さ」は格別で、敵に叩きつけた瞬間の振動とSEが手に伝わってくる感覚は、コントローラー必須と言いたくなるほど作り込まれている。
難易度については正直に書いておく。中盤以降のボスは相当手強く、死亡回数が二桁を超えるのは珍しくない。ただしダークソウル系に特有の「道中の雑魚に殺される理不尽さ」は少なく、ボスとの一騎打ちに集中する設計だ。アクションが苦手な人には向かないが、ボス特化の死に覚えと割り切れるなら敷居はやや低い。
## 中国神話の美術と演出——「見たことのない世界」の密度
このゲームを語るうえで映像美を避けることはできない。Unreal Engine 5で構築された景観は、一面の竹林、朽ちた寺院の柱、灼熱の火焔山——どれも中国の伝統的な美術様式と現代のフォトリアルが融合した独自のビジュアルを持っている。
特筆すべきはボスのデザインだ。単に強敵として立ちはだかるだけでなく、それぞれに背景となる神話上の逸話が用意されており、倒した後に語られるモノローグが切ない。巨大な蜘蛛の女怪が実は悲恋の末に妖怪に堕ちた存在だったと知るとき、戦闘の達成感が複雑な余韻に変わる。ゲームとして「強かった」だけでなく、物語として「見届けた」という感覚が残る。これはフロム作品の「断片的なロア収集」とも異なる、もっと直接的な感情への訴えかけだ。
環境音楽も質が高く、仏教音楽や伝統楽器を取り入れたスコアが世界観を支えている。戦闘中は激しく打楽器が鳴り響き、静かな探索場面では琵琶の音が響く——この切り替えが雰囲気の没入感を一段引き上げている。
## Steamレビューの背景にある「中国ゲーム史の転換点」
Steamの評価は「非常に好評」(執筆時点)を維持しているが、この数字にはゲームの出来以外の文脈も含まれている。『黒神話:悟空』はAAA規模の中国産ゲームとして世界市場に本格参入した事実上初の作品であり、中国のゲーマーにとって国産IPへの誇りを体現する存在だ。そのため評価にはナショナリズム的な熱量が混入しており、批判的な意見が少数派になりやすい土壌がある。
フラットに評価すると、技術的な粗さも存在する。カメラワークは閉所で破綻しやすく、一部のボスは攻撃の予備動作が短すぎて理不尽に感じる場面がある。序盤の探索エリアに比べ、後半はやや線形になり自由度が下がる。これらを「ゲームとしての欠点」と見るか「粗削りな熱量の証」と捉えるかで、評価が分かれる。
それでも、ゲーム全体の完成度はインディーやAA作品と比べる次元ではなく、グローバルなAAAタイトルと正面から競り合える水準に達していることは確かだ。「中国製だから」という下駄を履かせることなく、純粋にアクションRPGとして楽しめる。
## エンドコンテンツとやり込み要素
クリア後の世界もそれなりに充実している。各章に隠されたサブボスや、特定条件で出現する裏ボスが存在し、周回プレイで解放されるコンテンツもある。収集要素は悟空の「六根」に関連したアイテムが多く、物語の補完として機能している。
ただしオープンワールド系タイトルと比べるとエンドコンテンツの規模は大きくない。クリアまでの道中に全力を注いだ設計で、そこに20〜30時間の体験が凝縮されている。繰り返しプレイを前提とした「やり込み」より、一周の旅路を濃く味わうタイプのゲームだ。
中国神話に興味がある人、ソウルライクは好きだが陰鬱な雰囲気は苦手という人、圧倒的なボスビジュアルに惹かれる人——そういったプレイヤーには強く推せる一本だ。
プレイヤーの声
👍プレイ時間: 56時間
sekiroは好き。でもエルデンリングは合わないという人におすすめ。 ・ボス多め ・法術とやらで戦い方を変えながら戦えるが、基本メインの攻撃動作のみで撃破可能・鍵縄のような上下移動はほぼなし。 ・難易度はsekiroのほうが上だがやりごたえはある。
👍プレイ時間: 51時間
ドラマの西遊記や何かしらで西遊記に触れた人ならやってほしい作品 ソウルライクな作品だが理不尽な強さは無くゴリ押しでも行ける。 ストーリーがかなり面白くボスもかなりかっこいい。もちろんそれに立ち向かう主人公はもっとかっこいい。 西遊記を知らないと感情移入がしにくいので事前に見るのもあり 孫悟空に対するイメージがかなり変わった本当に満足
出典: Steam ユーザーレビュー
スクリーンショット











