Disco Elysium - The Final Cut

Disco Elysium - The Final Cut

開発: ZA/UM発売: ZA/UM¥1,025

Steam レビュー

圧倒的に好評

PlayNext レビュー

記憶を失った探偵として目覚める冒頭の数分間で、このゲームが「普通のRPG」ではないことを悟る。ホテルの部屋は荒れ果て、服は床に散らばり、自分の名前すら思い出せない。そこへ頭の中から声が聞こえてくる。それは「電圧スパイク」というスキル——自分の電気系統への過剰な感受性を司る内なる人格だ。Disco Elysiumは、プレイヤーの思考そのものをキャラクターとして描くという、他のどんなゲームも試みなかったアプローチでRPGの定義を書き換えた作品である。 操作の手触りは非常にシンプルだ。クリックして移動し、オブジェクトや人物にカーソルを合わせてインタラクトする。戦闘はない。スキルチェックはすべてダイスロールで処理される。しかしこの「シンプルさ」こそが罠であり、醍醐味でもある。会話の選択肢を選ぼうとすると、画面端から複数のスキルが割り込んでくるのだ。「エンパシー」は相手の本音を読み取ろうとし、「ドラマ」は大げさな演技を提案し、「ロジック」は矛盾を突こうとする。プレイヤーはこれら24種類のスキルが体現する「自分の内なる声」と常に対話しながら捜査を進める。 テンポはゆっくりだ。一つの証言を精査するだけで30分かかることもある。しかし退屈さとは無縁で、むしろ濃密なテキストの海に溺れる感覚がある。街の住人一人ひとりに固有の世界観があり、政治信念があり、傷ついた過去がある。物置小屋の番人に話しかけただけで、崩壊した左翼運動の歴史と個人的な挫折が語られる。情報の密度が異常に高く、「次のダイアログを読みたい」という衝動が常にプレイを前へ進める。 ビジュアルは油絵とデジタルアートを融合させたような独特のスタイルで、退廃した港湾都市「マルティネーズ」を描く。錆びついた建物、霧に霞む海岸線、荒んだ路地——どこを切り取ってもポストカードになりそうな美しさでありながら、確かな腐敗の匂いがする。BGMはジャンルを越境した楽曲群で構成され、シーンによってジャズ、アンビエント、歪んだロックが使い分けられる。Final Cut版では全台詞に声優が付き、テキスト量の多さを考えると驚異的なボリュームのボイスアクトを楽しめる。 世界観の構築は圧倒的だ。「レヴァショル」という架空の都市国家を舞台に、失敗した革命の残滓、資本主義の搾取、帝国主義の亡霊が複雑に絡み合っている。現実の政治哲学をモチーフにしながらも、独自の歴史と地理を持つ完全な別世界として機能している。メインの殺人事件の捜査は、この世界の「現在」だけでなく、数十年にわたる社会的崩壊の経緯を紐解く旅でもある。物語の核心はネタバレできないが、ゲーム終盤に明かされる「ある真実」は、プレイ中に積み重ねてきたすべての会話と選択に新たな意味を与える。 比較対象として挙がりやすいのはPlanescape: TormentやKnights of the Old Republicだが、Disco Elysiumはそれらとも異なる。Tormentがキャラクター性とナラティブの深さを追求したRPGの古典なら、Disco Elysiumはスキルシステムを「プレイヤーの自意識の可視化」として再設計した点で一歩先に踏み込んでいる。Outer Worldsのような選択肢重視の作品とも異なり、「何かを達成する」よりも「何者かになる(あるいはなれない)」プロセスを楽しむゲームだ。 プレイ時間の目安は初回で20〜30時間。ただしサイドクエストをすべて掘り下げれば40時間を超える。周回プレイの価値は高く、キャラクタービルドを変えると(知性派、肉体派、感情派、技術派の4タイプが基本)、同じ事件でもまったく異なる解釈と展開が生まれる。特定のスキルを極限まで上げると解禁される会話は、別周回の最大の楽しみだ。 注意点として、このゲームは読書体験に近い。テキスト量は小説一冊分を超え、英語版の場合は語彙も難易度も高い。日本語ローカライズは完成度が高いものの、独特の韻や言語遊びが失われている部分もある。また序盤の数時間は自由度が高すぎてどこへ向かえばよいか迷うことがある。「ゲームとして何かを攻略したい」「明確な達成感が欲しい」というプレイヤーには合わない可能性がある。 哲学的なテキストを楽しめる人、「キャラクターを演じる」よりも「キャラクターとして考える」体験を求める人、崩壊した世界とその中で生きる人々の物語に浸りたい人には、これほど適したゲームはない。逆に、アクションやリアルタイム戦闘を期待する人、長文テキストを読む気力がない人には正直なところ向かない。¥1,025という価格は、このゲームが提供する体験の深さを考えると信じられないほど安い。迷っているなら今すぐ買うべき一作だ。

プレイヤーの声

👍プレイ時間: 28時間

・TRPGが好きな人なら絶対におすすめ ・操作感については他の方も言及している通りやや悪いものの気にならない ・とにかくテキスト量は多いのでふんわり理解しながらでOK 世界観がしっかり作り込まれていて、かつ英語だけどフルボイスという豪華な作り。 映画の中に入り込んだような没入感がある。 一方で自分の選択次第で物語のディティールが変わり、2周目もプレイしたくなる。 時間を空けてプレイしてしまうと前に何をしてたのかがわからなくなるので、なるべくまとまった時間を取ってプレイするのがおすすめです。

👍プレイ時間: 24時間

テキストが多くて面白い。ゲームのテキストなんて多ければ多いほどいいぜ!って人におすすめです。あとキム・キツラギがメロい。それだけでもプレイする価値があると思います。

👍プレイ時間: 51時間

すべて素晴らしかったけど、翻訳が特に素晴らしい。 世界観に没入させてくれる、とてつもなくこだわって作られたテキストが 私の体験を最大限にしてくれた。

出典: Steam ユーザーレビュー

スクリーンショット

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