光の粒子が森の奥に溶けていくような映像美と、耳から離れない旋律。Ori and the Will of the Wisps の第一印象はそこにあるが、このゲームの本質は「美しい」という形容詞の外側にある。精霊オリを操り、失われた仲間フクロウのクウを探す旅は、アクションプラットフォーマーとして徹底的に磨き上げられた体験だ。前作 Ori and the Blind Forest から大きく刷新されたのは戦闘システムで、単なる回避・攻撃の繰り返しではなく、地形・敵・自分の動きが絡み合う立体的な判断が求められる。「感動する絵本」ではなく「手応えのある冒険」として、このゲームは着地している。
戦いのリズムと身体感覚
オリの移動は「吸い付く」という感触よりも「空気を掴む」に近い。壁を蹴り、エアダッシュで弧を描き、敵の投げた矢を叩き返す——一連の動作がシームレスに繋がったとき、操作そのものがリズムゲームの様相を帯びる。スピリットエッジやスピリットアークといった複数の武器は用途が明確に分かれており、遠距離の敵を崩しながら接近して叩き込む、という戦術的な組み立てが自然と生まれる。特にボス戦は「パターン暗記」ではなく「動きを読む」ことが求められるため、攻略できたときの満足感が大きい。Hollow Knight の重厚な剣戟とは異なり、オリの戦闘は軽快で浮遊感があるが、それでいて油断すれば即死する緊張感も持っている。
難易度設計の哲学
本作には「簡単・標準・難しい・1ライフ」という幅広い難易度設定が用意されている。注目すべきはカスタム設定で、ダメージ量・エネルギー回復速度・チェックポイント頻度をそれぞれ独立して調整できる。これは「難しいアクションが苦手だが世界観を楽しみたい」という層と「死にゲー的な緊張感を求める」層の両方を取り込む設計思想だ。ただし、デフォルトの標準難易度でも中盤以降のプラットフォームセクションはそれなりの反射神経を要求する。Celeste のように「補助設定を使っても完走できる」という明確なメッセージを持つ作品と比較すると、難易度カスタムの存在が十分に周知されていない印象がある。初見でつまずいた場合は、設定を見直すことを躊躇わなくていい。
プレイ環境の目安
コントローラーでのプレイを強く推奨する。フルコントローラーサポートが明記されており、アナログスティックによる入力が繊細な飛び込みやタイミング操作に直結する。キーボード・マウスでも遊べるが、Ori の空中移動の気持ちよさはコントローラーで初めて完成する。HDR対応も見逃せない点で、対応ディスプレイであれば森の光と影の質感が一段上がる。プレイ時間は本編クリアまで10〜12時間、コンプリートを目指すと15時間前後。Steamクラウド対応のため、PC環境が変わっても進捗は維持される。
この旅は一人で完結する
Will of the Wisps はマルチプレイや協力プレイを持たない、完全なソロ体験として設計されている。これは欠点ではなく、意図的な選択だ。オリの孤独と使命感、世界に点在するキャラクターとの短い交流——これらは一人のプレイヤーが静かに向き合うことで初めて機能する感情設計だ。友人と画面を囲みながら遊ぶ体験とは異なる、「自分だけの旅」として完結する種類のゲームがある。本作はそちら側にある。プレイ後に誰かと語り合いたくなるゲームだが、プレイ中は孤独でいい。
価格と体験の釣り合い
¥783という価格帯は、セール時の価格としてもフルプライスとしても納得感が高い。映像・音楽・操作感の水準は、数倍の価格帯のゲームと並べても遜色がない。Gareth Cokerによるサウンドトラックは単品で購入する価値があると言われるほどの完成度であり、それがゲームプレイ全体を包んでいる。ただし、メトロイドヴァニアとしての「地図探索・新能力解放による地形開拓」という骨格に魅力を感じない場合、美しさだけで10時間を持続させるのは難しいかもしれない。同ジャンルをすでに遊んだことがある人間にとっては「最良の一本」になり得るが、初めてメトロイドヴァニアに触れる人には、Hollow Knight や Dead Cells と並べて検討することを勧める。それでも¥783という価格は、その選択の敷居を大きく下げてくれる。












