グランド・セフト・オートV エンハンスト

グランド・セフト・オートV エンハンスト

Grand Theft Auto V Enhanced

開発: Rockstar North発売: Rockstar Games¥2,190

PlayNext レビュー

ロサンゼルスを模した巨大都市「ロスサントス」で、あなたは何者にでもなれる。銀行強盗の計画を練る元犯罪者、麻薬密売から足を洗おうとするストリートギャングの一員、そして精神的に不安定な証券詐欺師——三人の全く異なる主人公を操り、腐敗した社会の中で生き延びる物語を追う。グランド・セフト・オートVは2013年の初登場から10年以上が経過した今なお、「オープンワールドアクションゲームとはこういうものだ」という定義を更新し続けている怪物作品だ。そのエンハンスト版は、PS5/Xbox Series X世代向けに生まれ変わった究極の形として登場した。 ゲームの核心にあるのは「自由」だ。ただし、その自由は単なる「なんでもできる」という表面的なものではない。三人の主人公を任意のタイミングで切り替えられるシステムが、プレイヤーに独特のリズムを生み出す。ミッション中に操作キャラを瞬時に変更して包囲網を突破する、各キャラクターの日常を覗き見ながら次の展開を予想する——この三視点の切り替えによって、ロスサントスという都市が単なる「ステージ」ではなく、それぞれの人生が交差する「世界」として立体的に感じられる。 操作の手触りは、シリーズ経験者には懐かしく、初心者には少し癖があると感じるかもしれない。車の重さと慣性を意識したドライビング感覚、射撃時のカバーアクション、そしてスマートフォンを使ったミッション管理——これらが組み合わさることで、ゲームプレイに独特の「段取り感」が生まれる。特にメインミッションの強盗作戦では、事前準備(乗り物の確保、仲間の選定、アプローチルートの決定)から実行まで、映画的なテンポで展開する。うまくいけば爽快感が、失敗すれば「次はこうしよう」という学習欲求が湧いてくる設計だ。 エンハンスト版の最大の恩恵はビジュアルの進化だ。光の当たり方、水面の反射、雨に濡れた路面のテクスチャ——細部の質感が格段に向上し、都市の昼夜変化がより映画的に見える。砂漠地帯の強烈な日差しと遠景の霞、夜のダウンタウンに溢れるネオン、早朝のビーチに差し込む柔らかい光と波の音——ロスサントスをただ走り回るだけで、一種の観光的な満足感を得られるほどだ。3Dオーディオへの対応により、銃声の方向感覚や都市の雑踏の奥行きも増している。ラジオ局のシステムも健在で、車に乗るたびに流れる多様な音楽が、プレイ中の感情を自然に盛り上げる。 世界観は現代アメリカ社会の風刺に満ちている。腐敗した政治家、拝金主義のメディア、暴力と夢が混在するストリート文化——それらをブラックユーモアで包みながら、三人それぞれが「成功」を追い求める姿が描かれる。ネタバレを避けて言えば、物語は単純な勧善懲悪ではなく、プレイヤーに「誰が本当に悪いのか」を問い続ける構造になっている。ここがGTAVをただの暴力ゲームと区別する部分だ。 同ジャンルの競合として挙げるなら、まずロックスターの兄弟作品「レッド・デッド・リデンプション2」が対比として面白い。RDR2が「西部劇の詩情と孤独」を描くのに対し、GTAVは「現代都市の喧噪と欲望」を体現する。Saints Row シリーズがGTAの荒唐無稽さをさらに誇張したパロディ路線であるのに対し、GTAVはリアリティと笑いのバランスを保ちながら、独自の風刺文学的な重みを持つ。また、オープンワールドの街歩きという点では「サイバーパンク2077」と比較されることもあるが、あちらがRPG的なビルド構築の深みを持つのに対して、GTAVはよりアクション映画的な即興性と爽快感を重視している。 プレイ時間はストーリーのみのクリアで30〜40時間、サイドミッションや収集要素を含めると軽く80〜100時間は超える。さらにGTAオンラインが実質別ゲームとして機能しており、こちらは定期的なアップデートで新コンテンツが追加され続けているため、ハマれば数百時間単位の沼になる。オンラインでは他プレイヤーとの協力強盗、レース、カジノといったコンテンツが揃っているが、グリーファー(他プレイヤーへの嫌がらせ行為者)の存在はPvE目的のプレイヤーにとってストレスになることがある。アプリ内購入(シャーク・カード)の存在も把握しておく必要があるが、オフラインのストーリーモードには一切関係しない。 暴力表現と性的描写はシリーズの中でも際立って露骨であり、それを楽しめるかどうかが大きな分水嶺になる。社会的メッセージとして解釈できる余地はあるが、フィクションとしての過激さに不快感を覚えるタイプには向かない。また、GTAオンラインで本格的に遊ぼうとすると、高額な乗り物や施設を揃えるためのゲーム内通貨稼ぎが単調に感じられる局面もある。 「広大な世界を自分のペースで探索しながら、映画的なストーリーも楽しみたい」というプレイヤーには間違いなく刺さる一本だ。特に初プレイであれば、ロスサントスの密度と作り込みに最初の数時間は圧倒されるはず。一方で、明確な目標と進行方向を示してくれるゲームを好む人、あるいはサンドボックス的な自由さよりも緻密なシステム構築を求めるプレイヤーには少々もどかしさを感じさせるかもしれない。10年越しの名作が最高のグラフィックで蘇った今、未プレイなら飛び込んでみる価値は十分にある。

スクリーンショット

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