27万7千件を超えるレビューの97.3%が好評で、評価ラベルは最上位の「圧倒的に好評」。Coffee Stain Studios が2024年9月10日に正式リリースした一人称視点の工場建設ゲームは、数字だけ見れば文句のつけようがない。ただしこの作品で本当に見るべきなのは好評率ではなく、否定側のレビューに書かれている内容のほうだ。目に付く低評価レビューの多くが、このゲームを下手だとも壊れているとも言っていない。13時間で離脱した人は「圧倒的好評になっているのは納得できる部分はあります。」と認めたうえで非推奨を選び、6時間の人も「工場ゲームとしては素晴らしいが戦闘要素と探索要素が必須になっている点がネック」と書いている。褒めながら勧めない、という不思議な形のレビューが並ぶ。ここが購入判断の核心になる。
締切のない工場ゲーム
ストアの説明は本作を、未知の惑星に多階層の工場を建てベルトコンベアで理想の生産拠点を作るオープンワールドゲームとして紹介している。トラックや列車の自動化、パイプによる液体輸送、ジェットパックやハイパーチューブでの移動といった要素が並ぶが、実際に長く遊んだ人が最初に挙げる美点はそこではない。169時間のレビュアーは「敵が工場を破壊しに来ないので、時間に追われずプレイできる神ゲーです。」と書き、続けて「資源が無限にあるのもストレスなしで最高。」と記す。攻めてくる敵に備える必要も、枯れる鉱脈を追いかける必要もない。時間の圧力を意図的に抜いた設計になっている。
この「無い」ことの列挙は、実は本作が何を売っているかの説明になっている。ストア側の機能表にも難易度の調整といつでもセーブ可能が並び、協力プレイとオンライン協力プレイに対応する一方で、対戦や時間制限に類する要素は見当たらない。プレイヤーを急かす装置を極力置かず、代わりに生産ラインを整えること自体を報酬にする。同時接続は1万6千人台で、正式リリースから時間が経った作品としては十分に人が残っている部類だ。
その結果として起きるのは、遊び終わらないことだ。レビュー投稿者がこのゲームを遊んだ時間の中央値は約194時間で、短時間で片づく類ではないことが分かる。550時間のレビュアーは「金色のナッツを取るまでやったので一区切り。」としたうえで「工業と自動化の面白さを教えてくれた最高のゲーム。」と締めている。一区切り、という言い方に本作の性質がよく出ている。
目的が無いことを喜べるかどうか
同じ設計が、合わない人には正面から刺さる。13時間で非推奨に投じたレビュアーは「目的らしい目的が無い中で延々と高まる要求に答えていくだけ。何となにを繋げていこうかな?とそれの連続。ストーリがあるわけでもなく、敵もなんなら攻撃してこないように設定変更可能です。」と書いている。事実認識としては、169時間の絶賛レビューとまったく同じものを指している。敵が来ない、締切が無い、要求だけが増える。それを解放と読むか空虚と読むかで評価が反転する。この人は最後に「しかし、探検やストーリの合間にクラフトとかが私は好きなんだとこのゲームやってて気づきました。」と結論しており、これは作品の欠陥ではなく相性の申告として読むべきだろう。物語や到達点を燃料にして遊ぶ人は、序盤の数時間で自分の側の答えが出る。
もう一箇所、肯定側と否定側が同じ方向を向いている部分がある。探索だ。冒頭の6時間のレビュアーは「工場に集中したいのにかかり過ぎる探索時間、環境キルの存在や過剰にしつこい動物など求めていない要素が強くストレスだった。」と書いて離脱しているが、本作を神ゲーと呼ぶ169時間のレビュアーですら、絶賛の最後に「探索パートは飽きやすい」と一行だけ付け足している。つまり探索に取られる時間は、合わなかった人だけが騒いでいる要素ではない。工場の設計そのものが目的の人ほど、惑星を歩き回るパートはノイズに近づいていく。長く遊んだ側はそれを許容範囲として飲み込み、短時間で離れた側は序盤で正面から食らう、という違いにすぎない。
一人称であることの代償
構造的な不満として最も繰り返されるのが、一人称視点と建物サイズの組み合わせだ。272時間のレビュアーは「工場の規模が大きくなるにつれて一人称視点で工場建設ゲームは無理があるのでは?と思うようになってきた」と書き、「この建物を何棟建てたいと思っても俯瞰で見ることができないので数を把握するのも大変」と続ける。同じ人が「工場建設してる時間より移動してる時間のほうが長い気がする」とも記している。206時間のレビュアーも「あと、線路を敷くあたりから輸送網の構築に費やす時間が非常に長くなる。」と、規模が上がるほど作業比率が増える点を指摘する。
これは俯瞰視点の同種ゲームなら発生しない種類の負荷で、一人称という選択の代償として構造に組み込まれている。壮観さと引き換えに管理性を捨てている、と言ってもいい。逆に言えば、工場の中を実際に歩き回ること自体が目的の人には代償ですらない。50時間で「内容は面白いものの1人称視点に馴染めずリタイア。」と書いた人がいる以上、一人称が苦手な自覚がある人は体験版的に触れる機会を先に作ったほうがいい。
作り直しを楽しめる人向け
もう一つの分岐点は、施設の解体と再建をどう感じるかだ。151時間のレビュアーは「結局は「全て解体→1から練り直し」がかなりの頻度で必要となります」と書き、原因も明示している。素材の派生が多く、建物一つ一つが大きいため隙間に追加で差し込む逃げが効かない、という説明だ。そのうえでこの人は「作れるものが増えるたびに何時間もかけて施設全体を見直したいって方には非常に向いていると思います」と、向く人の条件まで書き残している。自分に合わなかったと結論した人の言葉として、これ以上正確な選別基準はない。
細部の摩擦も報告されている。92時間のレビュアーは「列車の使い方が意味わからん、普通にエラー内容を示さないの意味わからんわ」と鉄道システムの説明不足を挙げ、94時間のレビュアーは「クリーチャーが採掘地の地下にいて攻撃できないし再起動しても同じ場所にいて採掘機が建てられないバグが頻発してる・・・みんなどうやってこのゲームやってんの?」と不具合を報告している。後者は全員が踏む類ではなさそうだが、遭遇すれば進行が止まる種類のものではある。
二周目をどう作るか
長時間側の不満はまた別の場所を向く。212時間のレビュアーは「工場建設ゲームとしての完成度は高いのだが、固定マップなのが自分には引っかかった。」と書く。地形が毎回同じで、移動手段と輸送手段の選択肢が少ないため、周回しても同じ正解構成に落ち着くという指摘だ。797時間のレビュアーも「非常に楽しめましたが一つ要望があるとしたら別のマップが欲しい」と同じ場所を突いている。ただしこの人は「デフォルトでクリアした後は何度もModを入れて最初からプレイしなおしました。」と書き、Mod管理ツールで導入が容易だとも記している。マップが固定である事実は変わらないが、繰り返しの燃料を外部から足す道はある。
向くのは、締切と敵に追われず自分で目標を立てられる人、工場の中を歩き回ること自体が報酬になる人、そして完成品を壊して組み直す作業を進歩と感じられる人だ。向かないのは、物語や明確なゴールを動機にする人、一人称視点そのものが苦手な人、作ったものを解体させられることに徒労を感じる人。212時間のレビュアーが書くとおり「1周目の楽しさは間違いないので、リプレイ性を重視しない人にはおすすめできる。」というのが、最も外れの少ない要約だろう。97%という数字は、この振り分けを通過した人たちの満足度を測っているにすぎない。












