
ダレカレ
and Roger
開発: TearyHand Studio発売: Kodansha¥600
PlayNext レビュー
目を覚ますと、父親がいない。見知らぬ男が家にいる。その男は「ロジャー」と名乗り、差し出してくるのは正体不明の薬。ほんの数行の状況説明だけで、プレイヤーはすでに不安と好奇心のあいだに引っ張られている。『ダレカレ (and Roger)』はそういうゲームだ。派手な演出もなく、長い説明もなく、ただ「これはいったい何なのか」という問いだけを手渡してくる。
ゲームプレイの基本はポイント&クリックのアドベンチャー形式で、マウスのみでほぼすべての操作が完結する。部屋の中を調べ、ロジャーと会話し、少女の記憶や日常のかけらを拾い集めていく。テンポはゆっくりとしていて、せかされる感覚は薄い。「いつでもセーブ可能」という仕様もあって、プレイヤーは自分のペースで物語に入り込んでいける。難解なパズルに詰まって投げ出す、というタイプのゲームではなく、むしろ「次の会話を聞きたいから先へ進む」という引力で動いていく設計だ。操作の手触りはシンプルで、ゲームに不慣れな人でも戸惑うことは少ないだろう。
ビジュアルは手書き風のイラストスタイルで、柔らかく落ち着いた色調が使われている。日常的な室内の風景、朝の光の差し込み方、少女とロジャーの表情の変化。過剰に装飾せず、必要なものを必要なぶんだけ描いているという印象で、その静けさがかえって物語の不穏さを際立たせる。BGMはステレオサウンドで、環境音と音楽が場の空気感をつくる補助として機能している。音量を細かく調整できるのも、静かな雰囲気の中で集中したいプレイヤーには地味にありがたい。
ストーリーの核にあるのは「父親の不在」と「ロジャーの正体」という二つの謎だが、それ以上に印象的なのは少女の視点から描かれる混乱と戸惑いのリアルさだ。子どもが理解できないことに直面したとき、大人に説明を求めても会話がかみ合わない、あの感覚。ロジャーとの対話はどこか噛み合わなくて、それが意図的に演出されているのがわかる。薬を差し出す行為の不可解さも含め、「怖い」というより「どういうこと?」という感情が積み重なっていく構造になっている。ネタバレは避けるが、この物語は単純なミステリーではなく、もう少し個人的なテーマに向かっていく。
類似のゲームとしては『OMORI』や『Yume Nikki』のような、子どもや少女の視点から語られる不安と内面を描いた作品群が浮かぶ。ただし、それらと比べると『ダレカレ』はずっとコンパクトで、プレイヤーに課す負荷も軽い。恐怖や暗鬱さで押しつぶすのではなく、小さな疑問符を積み重ねることで引っ張る。また、国産インディーの短編ノベルアドベンチャーとして『ATRI』や『fault』シリーズとも比べられるかもしれないが、ゲームプレイの密度はより薄く、純粋に物語体験に特化している。¥600という価格帯とあわせて、「映画の短編作品」に近い感覚で接するのが正直なところだ。
プレイ時間は1〜2時間程度が目安になると思われる。エンディングが複数あるかどうかは一周しただけでは断言できないが、Steam実績の存在が示唆するように、選択肢や調査対象によって何らかの分岐や発見があると考えられる。短いゲームではあるが、1周で物語の輪郭は掴めるはずで、再プレイの動機もゼロではない。ただし、ガッツリとやり込むエンドコンテンツを期待するものではない。
注意点を正直に言うなら、ゲームとしての「手応え」を求めると物足りなさを感じる可能性がある。謎解き要素は最小限で、選択肢によって物語がドラマティックに変化するわけでもない。どちらかといえば、インタラクティブな読書体験として捉えるべき作品だ。また、日本語のテキストが主体のゲームなので、文章のトーンや言葉選びへの感受性がそのまま体験の質に直結する。
こういう人に強くすすめたい。短時間で完結する物語ゲームが好きな人、日常の中にひっそりと潜む違和感を描いた作品に惹かれる人、子ども視点のナラティブ体験に関心がある人。¥600という価格はランチ一食分にも満たないが、それで得られる「静かな余韻」は十分に引き合う。逆に、アクションやパズルのゲームプレイを楽しみたい人、長く遊べるボリューム感を求める人には向いていない。このゲームは「何かが起きること」ではなく「何かが起きた後の、静かな問い」を提供するものだ。それを求めているなら、間違いなく手に取る価値がある。
プレイヤーの声
👍プレイ時間: 1時間
購入前のご注意に書いてある通り、気軽におすすめ!って作品じゃないけど、個人的にはプレイして良かった。演出も秀逸。 実績要素は蛇足かも。
👍プレイ時間: 1時間
私にとってかなり身近な話です。このゲームはプレイヤーの立場により感じ方は相当変わるのではないでしょうか。
👍プレイ時間: 2時間
色んな方がやってらしたので購入させていただきました。大泣きしてしまいました。 身近に起こりうる内容だったし、簡潔に内容をまとめてくださってるのでやりやすかったです。男性のセリフで涙腺崩壊しました。これは皆さんにお勧めしたいゲームです。
出典: Steam ユーザーレビュー
スクリーンショット











