ダレカレ

ダレカレ

and Roger

開発: TearyHand Studio発売: Kodansha¥600

PlayNext レビュー

父がいない。代わりに、見知らぬ男がいる。それだけの情報を手に、少女は——そしてプレイヤーは——朝の家の中で途方に暮れることになる。『ダレカレ (and Roger)』は、600円という価格と「カジュアル」というジャンルタグに反して、じわじわと胸の奥に入り込んでくる作品だ。派手な演出も、壮大な世界観もない。あるのは、かみ合わない会話と、そこから滲み出す違和感と、「父親はどこへ行ったのか」という一点に絞られた静かな問いだけ。それだけなのに、画面から目が離せなくなる瞬間がある。 ## 「かみ合わなさ」こそが物語の核心 このゲームで最も印象的なのは、会話の質感だ。見知らぬ男——ロジャーと名乗る彼——との対話は、どこかずれている。少女が踏み込もうとすると、ロジャーはうまく話をそらす。直接「父はどこですか」と聞こうとしても、答えはいつも曖昧で、焦点が定まらない。プレイヤーは少女の視点でこの「かみ合わなさ」を体験するため、不信感と、それでもどこか引き寄せられる感覚が同時に生まれる。 ゲームプレイは選択肢ベースのアドベンチャーで、マウスだけで完結する。テキストを読み、部屋を探索し、ロジャーや周囲のものとインタラクトする。難解なパズルはなく、操作に迷うことはほぼない。体験の密度はテキスト量と選択肢の重みに集中しており、「ゲームをプレイしている」というよりも「小説を読みながら、ときどき選択している」という感覚に近い。 謎の薬をどうするか。ロジャーの言葉をどこまで信じるか。こういった選択が積み重なって、少女の態度——ひいては物語の方向——が少しずつ変化していく。大きな分岐というよりは、関係性の微妙な色合いが変わっていくイメージで、「正解の選択肢」を探すのではなく、「自分がどう感じるか」をそのまま選ぶほうが作品との距離が縮まる。 ## 選択肢が積み重ねる「関係性の変容」 分岐の設計について、『ダレカレ』はいわゆるマルチエンディング型の作品とは少し異なるアプローチを取っている。『Lifeline』や『Florence』といった国内外のモバイル寄りアドベンチャーと比較すると、本作の選択肢は「結末の分岐」よりも「少女とロジャーの関係性の変容」に重きを置いている。ロジャーへの警戒心が高いまま進むと、会話のトーンが変わり、ロジャーが見せる表情も変わってくる。最終的に同じ場所に辿り着くとしても、そこに至る空気感が全く違う。 こうした設計は、一周クリアしたあとに「もう一度違う選択をしたらどうなるか」という気持ちを自然に生む。ボリューム自体は短く、一周あたり1〜2時間程度でエンドを迎えると思われるが、その短さゆえに複数周が苦にならない。むしろ、余韻が残っているうちに選択を変えて同じ朝に戻ることで、物語の輪郭が立体的に浮かび上がってくる構造になっている。 『Omori』や『UNDERTALE』のように「プレイヤーの選択が世界に返ってくる」という重厚さとは異なる。もっと日常的で、もっと小さなスケールで、それでも「自分がどう選んだか」という感覚はしっかりと残る。TearyHand Studioのこのアプローチは、インディーノベルゲームの中でも独自の立ち位置を感じさせる。 ## 初見プレイヤーへのアドバイス まず、「答えを急がない」こと。父親の失踪という謎は確かに物語の骨格だが、このゲームの本当の面白さはロジャーという存在そのものを味わうところにある。彼が差し出す謎の薬、微妙に嚙み合わない言葉、時折見せる一瞬の表情——こういったディテールをじっくり受け取りながら進むと、ラストの手触りが大きく変わってくる。 次に、「選択肢を構えすぎない」こと。正解を探そうとすると、かえってゲームの空気から外れてしまう。少女がその状況でどう感じるかをそのまま選んでほしい。不安なら不安な選択肢を、信じたいなら信じる選択肢を。その積み重ねが、後半の感触を決定的に変える。 また、サウンドはヘッドフォン推奨だ。BGMと環境音の設計が丁寧で、家の中の静けさや、ロジャーが話すときの空気感がよく伝わってくる。カスタム音量調整が実装されているのもありがたい。 人を選ぶポイントとしては、ゲームとしての「難しさ」や「操作の複雑さ」を求めるプレイヤーには向かない。あくまでも読むことと、感じることが中心の体験だ。逆に、短い時間で完結する読み物的なゲームを探している人、日本語インディーの繊細な物語が好きな人、そして「日常の中の異物」というテーマに引っかかる人には、この600円は間違いなく元が取れる。 短くて静かで、それでもちゃんと刺さる——そういう作品が好きなら、この朝の家に足を踏み入れてみてほしい。

プレイヤーの声

👍プレイ時間: 4時間

物語性、表現、デザイン、音楽、遊びやすさなど、全てが素晴らしかったです。普段、ゲームをあまり遊ばない自分でも十分に楽しむことが出来ました。ゲームでもこのような表現方法、追体験ができるのかと、ゲームの可能性を感じた凄い作品だと思います。素晴らしいゲームを作って頂きありがとうございました。 次回作も楽しみにしています。

👍プレイ時間: 2時間

よくある単なるお涙頂戴だろと思ってましたが良い意味で裏切られた およそ1時間程度で終わるダレない長さ 簡素な操作だがきちんと考えられたギミック 内容にマッチしたビジュアル 全てが良かった 実績の為には改めてやり直す必要があるが、要所要所のギミックや表現が何を意味していたかがよく分かり、初回とは別の楽しみ方も出来る(初回での感動を分析で薄めたくないって人はやらない方がいいかもしれません) チャプターは1~3まであり、どういうテーマかは正直中盤行く前に分かったちゃうくらいあからさまな所もあるのでやり始めは不安でしたが、謎解きメインのゲームでもないし心配はいらない

👍プレイ時間: 1時間

最初はよくわからなかったけど終盤にかけて感情が押し寄せてきて クリア後に泣いてしまいました、素敵な物語でした。

出典: Steam ユーザーレビュー

スクリーンショット

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