PARANORMASIGHT: The Mermaid's Curse

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語

パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語
key visual / steam

批評

前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』が残した余韻は、「これほど密度の高いアドベンチャーがあったのか」という驚きだった。江戸の伝承と現代の呪いが交差する本所を舞台に、複数の視点が絡み合いながら真相へと収束していく構造は、短いプレイ時間のなかに刃のような緊張感を詰め込んでいた。その続編となる本作は、舞台を三重県の伊勢へと移し、「人魚」にまつわる土地の伝承を軸に新たな群像劇を展開する。新しい土地、新しい呪い——それでも、根底に流れる手触りは間違いなくあの体験の続きだと感じさせる。

土地そのものが語りかける探索

本作の探索はフィールドを駆け回るアクションではなく、画面上に広がる場所を丁寧にクリックし、会話を重ね、伝承の断片を集めていく行為だ。伊勢という土地が持つ神話的な空気感——御神域、海、古い民家——がそのまま舞台装置として機能しており、画面の隅に映り込む背景の一枚一枚が物語の文脈を持っている。

「ここをタップすれば何かある」という直感が磨かれていく感覚が心地よい。アイテムや証言を組み合わせる謎解きは難解ではなく、むしろ「気づいたらすべてつながっていた」という快感に設計されている。探索の手応えは、脱出ゲームのような論理パズルよりも、推理小説の傍点を拾いながら読み進める感覚に近い。

呪いが生む選択の緊張

パラノマサイトシリーズの中核にあるのは「呪い」だ。ただ眺めているだけでは死なない——しかし、特定の条件を満たすと登場人物は呪いを発動させ、一瞬でゲームオーバーになる。この「見えない地雷」の存在が、選択肢ひとつひとつに体温を与えている。

本作では複数の人物視点が用意されており、ある人物から見れば「善意」に映る行動が、別の視点では致命的な契機になっている。この多層構造が探索の動機を持続させる。「さっきのあの選択はどういう意味だったのか」という問いが次の章への推進力になり、プレイヤーは自然に物語の全体像を組み立てようとしはじめる。オートセーブと任意セーブが充実しているため、試行錯誤のストレスは最小限に抑えられている点も助かる。

時間を忘れる、語りの密度

本作が最も光る瞬間は、会話の中にある。キャラクター同士が伊勢弁の温度感をにじませながら交わすやりとりは、単なるテキスト消化ではなく、関係性の変化そのものを見せるドラマになっている。「青春群像」という言葉の通り、登場人物たちの感情の機微が丁寧に描かれており、呪いの恐怖と隣り合わせに淡い関係性が育っていく対比が効いている。

ジャンルで比較するなら、『十三機兵防衛圏』のように多視点が収束する構造や、『春ゆきてレトロチカ』の推理ログを手繰る感覚に近い部分がある。ただし本作はテキスト量を抑えて密度で語るタイプであり、数十時間かけて世界観を堆積させる大作ノベルゲームとは異なる。5〜8時間程度でひとつの結末まで到達できる濃縮された体験設計で、長大なノベルゲームが苦手な人にも入りやすい。

細部に宿る作り手の意志

BGMと環境音の使い分けが繊細で、静寂が演出として機能している。会話が止まる瞬間に波の音だけが残るような間の取り方は、テキストよりも雄弁に感情を届けることがある。カスタム音量調整が用意されているのも、この音設計への自信の現れかもしれない。

一方で、本作を楽しむうえでの注意点も挙げておきたい。前作のキャラクターや世界観を知っていると理解が深まる部分があるため、できれば『FILE23』からプレイするのが望ましい。また、物語の核心にある「伝承」と「呪い」の解釈は最後まで明かされないまま読者に委ねられる部分も多く、明快な答えを求めるプレイヤーには若干の消化不良感が残る可能性がある。謎の余白を楽しめるかどうかが、本シリーズとの相性を左右する。

伊勢という土地の持つ神秘性を丸ごと舞台装置に変え、人魚伝説と青春の苦さを呪いの構造に溶かし込んだ本作は、「アドベンチャーゲームで何かを体験した」と言える作品だ。¥2,480という価格は、この密度に対して誠実な数字だと思う。

プレイヤーの声

面白かったけれども、1と比べてホラー要素が薄くなったのと、二作目ということでメタフィクションに対して構えてしまうので、どうしても面白さは落ちるかな。 まだ1をやっていない人は先にそちらをプレイするのをおすすめします。 1が面白かったという人にはおすすめです
▲ recommended·played 8h
前作に引き続きめちゃくちゃ面白かったです! 今作から登場人物はすべて新しくなりましたが、今作のキャラクターたちも個性的でそれぞれのコンビのやり取りが面白かったです。 ストーリーはホラーミステリーではありますが、それだけでは片付けられないほど最高のストーリーでした
▲ recommended·played 18h
めちゃくちゃ面白かった、その一言に尽きる作品です。 前作をプレイしているとより楽しめますが、本作から始めても問題なく理解できます。ゲームという媒体を利用した様々な仕掛けや見事な伏線回収には感服するばかりです。 前作と比べ、終盤の盛り上げ方が進化していると感じました。また、前作のトゥルーエンドは少ししこりが残る終わり方だったのですが、本作は非常に読後感もいいです。 全体的な完成度ではこれまで世に出たノベルゲームの中でも屈指の出来だと思います。
▲ recommended·played 11h

source: steam user reviews

スクリーンショット

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