6本の武器を同時に握りしめたジャガイモが、エイリアンの大群の中を転がり回る——Brotatoの第一印象はそのシュールさで笑いを誘うが、気づけば何時間も画面に張り付いている自分がいる。このゲームは「1ラン10〜20分で終わるローグライト」という軽さを看板にしながら、ビルドの深みとウェーブ間のアイテム選択に本物の戦略性を詰め込んでいる。¥406という価格帯が信じられないほどの密度で、入り口の間口を広くしつつ、やり込みの天井を高く設定することに成功している一本だ。
武器と特性が生み出すビルドの自由度
Brotatoの最大の特徴は、最大6スロットに武器を自由に組み合わせられる点だ。ショットガン×4でゼロ距離に特化するもよし、スナイパーと近接武器を混在させてリーチの隙間を埋めるもよし。武器の選択はそれだけで終わらず、キャラクター固有の特性とアイテムが絡み合ってビルドの方向性を決定づける。
たとえば「Engineer」キャラを選ぶとタレット系の効率が跳ね上がり、自然と設置型プレイに誘導される。一方「Crazy」は武器ダメージが高いが命中精度がゼロで、近接特化にするか炸裂系で面をカバーするかの二択を迫られる。キャラ選択の時点でビルドの輪郭が決まり、ショップとアイテムの引きでそれを太らせていく構造は、Vampire SurvivorsやEnter the Gungeonと比べても一段と「組み立てる楽しさ」が前面に出ている。Vampire Survivorsが「武器の進化ツリーを走り切る達成感」なら、Brotatoは「今手元にある素材でベストな答えを出す即興料理」に近い。
爽快感の正体——密度と速度のバランス
ウェーブが進むにつれてエイリアンの密度は指数関数的に上がっていく。画面を埋め尽くす敵の波の中で、6本の武器が全方位に弾を撒き散らす光景は純粋に気持ちいい。しかしBrotatoの爽快感はただの弾幕ではない。自分のビルドが「想定通りに機能した瞬間」の快感が底にある。
近接特化ビルドで敵の群れに突っ込んで跳ね返す瞬間、タレットがヘイトを引きつけている隙に遠距離でヘッドショットを重ねる瞬間——それは偶発的なものではなく、ウェーブ間のショップで積み上げてきた選択の結果だ。「この構成ならいける」という確信が試されて正解だったときの手応えは、同ジャンルの中でも特に強い。失敗したときも「あのアイテムを選ぶべきだったか」と次のランへの動機が自然に湧いてくる。
ソロとマルチの体験差
ソロでのプレイが基本的な楽しみ方だが、Brotatoはローカル協力プレイとRemote Play Togetherに対応している。2人で同じ画面を分割して並走する体験は、互いのビルドを見せ合いながら「俺は回復特化で行くからお前は火力を伸ばせ」という即席の役割分担が生まれ、単純にランが2倍面白くなる。
ただし、マルチは「一緒に同じゲームをやる楽しさ」であって、協力して敵を倒す戦術的連携はほぼ発生しない。各プレイヤーは独自のアリーナで戦うため、本質的にはソロ体験の並走だ。ガチガチの協力プレイを求めるなら拍子抜けするかもしれないが、友人と「どっちが長く生き残るか」を競う感覚でやるには十分すぎるほど機能している。
戦いのリズムとテンポ——短くて濃いループ
1ウェーブは20秒前後、全20ウェーブでクリアという構成は、ゲームプレイの密度をほぼ完璧にコントロールしている。ウェーブ終了→ショップ→ウェーブというサイクルが小気味よく回り、「もう1ランだけ」の罠にはまり続ける中毒性はかなり高い。
比較対象としてHades IIを挙げると、あちらはダンジョンを走り抜ける距離感があり1ランの重みが大きい。Brotatoは逆で、失敗しても「10分のやり直し」という軽さが心理的なハードルを下げる。ただしその軽さゆえに、後半ウェーブの難易度スパイクが突然牙を剥くことがある。序盤はヌルいのに15ウェーブ以降で急に詰まる感覚は人を選ぶ。難易度設定(Dangerレベル0〜5)で調整できるが、初見は少し戸惑う可能性がある。
武器・スキルのバリエーションと長期的な楽しみ
基本のキャラクター数は50種類近く、武器は数十種類、アイテムはさらに多い。全キャラクターをアンロックして制覇しようとすると、数十時間は軽く消える。Steamワークショップにも対応しており、コミュニティ製のキャラクターや武器Modが多数公開されているため、バニラの内容を出し切った後の延命手段も用意されている。
注意点として、視覚的なカオスが苦手なプレイヤーには向かない。後半ウェーブは画面全体が弾と敵で埋まり、自キャラを見失うことが頻繁に起きる。また、ビルドの方向性をショップで大きく変えようとすると中途半端になりがちで、「一貫したテーマでビルドを育てる」スタイルを守らないとジリ貧になる。この「方針を貫く力」を試されるゲームデザインは、ランダム性に流されやすいプレイヤーにはフラストレーションを与えることもある。
それでも、¥406で手に入るコストパフォーマンスと、1ラン完結の手軽さは他に類を見ない。「ちょっとだけやろう」が「もう3時間」になる魔力を持ったゲームだ。












