18万件を超えるレビューの97.0%が好評、評価ラベルは最上位の「圧倒的に好評」。Motion Twin が2018年8月6日に出したこの2Dアクションプラットフォーマーは、数字だけ見れば議論の余地がない。ところが日本語のレビューを一本ずつ読むと、奇妙なねじれが見える。おすすめに票を入れた17時間のプレイヤーが「ただ、面白い反面、10時間ほどプレイすると少し飽きが来る印象でした。」と書き、6時間のプレイヤーが「そこまで傑出したものは感じられなかった。」と書いている。一方で、おすすめしないに票を入れた側には111時間と115時間の人間がいる。賛否がプレイ時間と対応していない。この作品で割れているのは出来の良し悪しではなく、「同じ城を何十周もすること」を娯楽と呼べるかどうかだ。
操作感については誰も争っていない
肯定側も否定側も、動かした瞬間の手触りだけは一致して褒める。438時間のプレイヤーは「動作が軽快で操作感もとても良く、かなり作り込まれていると思いました。」と書き、3時間のプレイヤーは「軽くて素早いアクション 連撃をぶちこむのが楽しくてしょうがない」と書く。注目すべきは、非推奨に投じた9時間のプレイヤーですら「操作感は良い。けど、やりこもうと思えなくて1週クリアでリタイア。」と、まず操作感を認めてから離脱していることだ。19時間で挫折した人も「アクション動作はすごくいいと思うので高難易度に耐えきれる人ならば楽しめると思います」と条件付きで勧めている。
つまり「触って気持ちいいか」で迷う必要はほぼない。判断すべきなのはその先、繰り返しに耐えられるかである。Steam の説明文が掲げるのは「チェックポイントなし。殺して、死んで、学ぶ。その繰り返しだ」という設計で、死ねば城の入口に戻される。持ち越せるのは解放した通路・変異・武器といった進捗だけだ。この構造を面白いと感じるか、作業と感じるかが分水嶺になる。
ローグライトを買うのであって、メトロイドヴァニアを買うのではない
ジャンル表記の「メトロイドヴァニア」に引かれて買うと、期待と実物がずれる。16時間で非推奨に投じたプレイヤーの整理が正確だ。「同じところをグルグル回っている感覚で、割とすぐに飽きが来る。」と書いたうえで「純粋なメトロイドヴァニアを求めている人には合わないかも?」と付け加え、さらに「ゲーム自体はとても良く出来ているとは思う。」と結んでいる。この不満は品質ではなく期待値の設定に起因している。一枚の巨大な地図を少しずつ塗り広げていく達成感を求めているなら、毎回組み直されるマップはその欲求をどこまでも満たさない。
同じ構造を肯定側から見るとこうなる。438時間のプレイヤーは「マップの構造も毎回変わり、武器も使い勝手の良いものから変なものまで様々で、リプレイ性も高いと思います。」と評価し、61時間のプレイヤーは「使い勝手が良いわけではないけどそこそこ面白い武器があるので武器集めるだけでも楽しめるかも。」と書く。同じ「毎回変わる」が、片方には空虚に、片方には飽きの回避装置に見えている。地図を踏破したい人ではなく、その日の手札で立ち回りを組み直すのが楽しい人向けだ。
100時間の先にある二つの壁
長時間プレイヤーの否定意見は、序盤の不満とは質が違うので分けて読む価値がある。111時間のプレイヤーは「セルを集める作業をする事100時間以上・・」と書き、解放要素で引き延ばされる構造そのものを批判している。19時間で止めた人も「そして難易度と共にもう一つの問題は解放に必要なアイテムのセル入手量と要求数が合ってなさすぎる。」と同じ場所を指しており、通貨の要求量と入手量のバランスが不満の共通の震源になっている。全解放を目標に据えるタイプの人ほど、この摩擦を強く踏む。
もう一つは高難易度帯の変質だ。115時間のプレイヤーは「ベリーハードまでは楽しめたが、エキスパートからは苦痛に感じるようになった。」としたうえで「このせいで、このゲームの良いところであると思っていた爽快感が完全に損なわれている。」と書く。爽快感を売りにしたゲームが、最上位難易度では慎重さを要求してくる、という設計上の反転である。ここは全実績・最高難易度まで行く人だけが踏む領域なので、一周クリアを目標にする人には無関係でいい。
見落とされがちな不満もある。別の9時間のプレイヤーが「プレイするだけでえげつなく目が疲れる」「映像設定もいじれる項目が少ないので対処のしようがない」と報告している。この手の映像で消耗しやすい自覚がある人は、返金可能な時間内に自分の目で確かめておいたほうがいい。
物語は「拾う」ものであって「読む」ものではない
もう一つ、購入前に期待値を合わせておくべきなのが物語の扱いだ。ストアの説明は「失敗した錬金術の実験者」として陰鬱な島を探索する設定を語るが、実際の提示のされ方は断片的で、腰を据えて読ませる作りではない。3時間のプレイヤーはそれを長所として挙げ、「「話す」で得られる断片的なストーリー」と「素晴らしい世界観」を評価点に並べている。逆に1時間のプレイヤーは「ただ、世界観というかゲームの雰囲気がチグハグで、いまいち置いてけぼり感が付きまといます。」と書き、そのうえで「「お話しだとか世界に隠された謎とかどーでもいい、アクションが楽しめれば十分」という人にはいいと思います。」と条件を明示している。これはおすすめ側の票であることに注意したい。世界観の説明不足を認めながら、アクションの出来で買いと判断している。
この作品は本編を通してオンライン要素を持たないシングルプレイヤー専用で、Windows・macOS・Linux で動き、Steam ワークショップと Remote Play に対応している。運営の姿勢についての証言もある。同じく1時間だが別のプレイヤーは、日本語の文字化けを報告したところ修正されたと書き、「現在も、更新が継続されており、スタッフさんの熱意には感服する次第です。」と述べている。2018年の作品を今から買う場合に効いてくる情報だ。
向く人と、はっきり向かない人
レビュー投稿者がこの作品を遊んだ時間の中央値は約35時間で、一周クリアで切り上げる人だけが並んでいる数字ではない。難易度については59時間のプレイヤーの「難しいゲームですが、初めてクリアできた時の達成感は凄かった。オススメです。」が代表的な体験で、逆に言えば達成感が報酬として機能しない人には長い。19時間のプレイヤーは挫折を報告したあとに「設定でダメージ等を弄れば大分楽になるのでクリアはしやすくなります。」と追記しており、腕前だけが障壁になるわけではない。
向くのは、毎回配られる武器で戦い方を組み替えるのを楽しめる人、死んで覚え直す時間を損失と思わない人。3時間のプレイヤーが挙げる「ドット絵のエモさをふんだんに活かしつつも細かく凝ったグラフィック」や「世界観に合致したしゃれた音楽」を目当てに買うのも十分成立する。
向かないのは三種類だ。連続した物語を求める人(49時間のプレイヤーは「ストーリーが基本ないゲームだし、自分には合わない感じですね」と書いている)。一本道の地図を攻略し切って終わりたい人。そして解放要素をすべて埋めないと気が済まない人 — 最後の一群が、100時間超えて「つまらん・・」に辿り着いた層と重なっている。一周クリアで満足して離れるつもりなら、その落とし穴には近づかずに済む。












