Echoes of Aincrad

Echoes of Aincrad

開発: Game Studio Inc.発売: Bandai Namco Entertainment Inc.¥8,910

PlayNext レビュー

浮遊城《アインクラッド》の100層を踏破するか、それとも死を迎えるか――その二択しか存在しない世界に放り込まれたとき、あなたは誰と手を組むのか。「Echoes of Aincrad」が問いかけるのは、単純なアクションRPGとしての腕前ではなく、極限状態における人間関係の結び方だ。デスゲームという設定を借りながら、このゲームが本当に描こうとしているのは剣と魔法の派手な戦闘ではなく、仮想世界の中で生まれる「絆」の重さと脆さである。その核心を理解した瞬間から、プレイヤーはただのアクションゲームとは異なる感触を確かに掴むことになる。 戦闘システムはリアルタイムアクションを基調としており、ソードスキルと呼ばれる固有技を組み合わせたコンボが中心となる。操作感はソウルライク系の重厚さよりも、やや軽快でテンポよく動かせる設計で、モーション中に先行入力でキャンセルできる仕組みが気持ちよいリズムを生んでいる。敵の攻撃には明確な予備動作があり、回避やパリィのタイミングを掴むことで被ダメージを大幅に抑えられる。難易度は序盤こそ緩やかだが、階層が上がるにつれて敵のパターンが複合化し、単純なゴリ押しが通用しなくなる。スキルツリーは剣士・アサシン・スキルマスターなど複数系統に分岐しており、同じゲームを2周しても異なる手触りを楽しめる奥行きがある。やり込み要素としてはレア武器の収集、NPC好感度の上昇によるサイドクエスト解放、そして各層のボスへの速攻クリア記録など、本編クリア後も引き止める要素が丁寧に積み上げられている。 ビジュアル面では、浮遊城という舞台の特性を活かして、各層ごとに大きく異なる景観が用意されている。1層の石畳と中世ヨーロッパ風の街並みから、中層では深い森の中にそびえる遺跡、高層になると白銀の雪原と空に浮かぶ橋が広がるなど、「次の層はどんな世界か」という期待感がプレイの推進力になっている。キャラクターモデルはアニメ調のデフォルメが抑えられたリアル寄りのデザインで、感情表現の繊細さに力が入っている。音楽は場面に応じてオーケストラとシンセサイザーを使い分けており、特に中ボス戦での弦楽器と打楽器の掛け合いは緊張感の演出として見事に機能している。街の環境音――NPCたちの生活音や遠くで鳴る鍛冶の音――が世界の「厚み」を感じさせてくれる点も見逃せない。 物語の軸は《ソードアート・オンライン》という原作の持つデスゲーム設定を踏まえつつ、本作独自のキャラクターたちが100層攻略という共通目標のもとで交差していく群像劇として描かれる。「ここで死んだら現実でも死ぬ」という前提が、NPCとの何気ない会話にも独特の緊張感をもたらす。仲間になるキャラクターたちはそれぞれ仮想世界に閉じ込められた理由や、現実での事情を抱えており、関係性を深めるほどに彼らの背景が少しずつ明かされていく構造はストーリーへの没入を助けている。「現実よりも残酷で、現実よりも温かい」という公式のキャッチコピーは誇張ではなく、プレイ中に何度かその両面を直撃されることになるだろう。 同じアクションRPG系統で比較するなら、「テイルズ オブ」シリーズと類似した仲間関係の描き方を持ちながら、戦闘のテンポは「ニーア オートマタ」に近い軽快さがある。ただしニーアほどアクションの純度は高くなく、RPGとしての育成と探索の比重が大きい。MMORPG的な雰囲気という点では「ファイナルファンタジーXIV」の物語重視の姿勢と共鳴する部分があるが、こちらはあくまでシングルプレイヤー体験として完結しており、オンライン要素は一切ない。世界観の元ネタであるSAOのゲーム化作品としては過去にも複数タイトルが存在するが、本作はより「ゲームとして成立している」という評価が的確で、アクション部分の手応えと物語の深度のバランスが明らかに改善されている。 プレイ時間の目安はメインストーリーの一周で40〜50時間、サイドクエストや収集要素を含めると70〜80時間に達する。エンドコンテンツとして特定条件を満たしたときのみ挑戦できる「ラビリンス」と呼ばれる高難度ダンジョンが用意されており、2周目は選択肢の違いで一部のルートやエンディングが変化するため、物語を完全に把握したいプレイヤーには複数周の動機がある。 注意点として正直に伝えておきたいのは、序盤約10時間はチュートリアルと世界観の説明に比重が傾き、戦闘の深みが本領を発揮するのは中盤以降だということだ。また原作アニメ「ソードアート・オンライン」のファンに向けたサービス要素が随所に散りばめられているため、原作未見のプレイヤーが拾いきれないニュアンスも存在する。¥8,910という価格設定はインディーとしては高めで、戦闘を重視するプレイヤーには物語の密度に比べてアクションの幅が物足りなく感じる場面もある。 仮想世界の物語に感情移入しながらキャラクターとの関係を丁寧に育てていくRPGが好きな人、SAOの世界観をゲームとして体験したいと思っていた人、そして「人と繋がること」をテーマにした重みのある物語を求めている人には強く勧めたい。逆に純粋なアクションゲームとして遊びたい人や、物語の比重よりも戦闘システムの複雑さを優先したいプレイヤーには、期待と実物のギャップで物足りなさを感じる可能性がある。浮遊城の中で誰かと肩を並べて生き延びようとする体験に価値を見出せるかどうか――それがこのゲームを楽しめるかの分水嶺だ。

スクリーンショット

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