
FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE
開発: Square Enix発売: Square Enix¥5,478
PlayNext レビュー
1997年にPlayStationで世界を震撼させた『FINAL FANTASY VII』。あのミッドガルという街に足を踏み入れた瞬間の感覚を、まったく別の密度と解像度で再体験できる——それがこの作品の核心だ。リメイクと聞くと「懐かしさを楽しむもの」というイメージがあるが、『FF7リメイク インターグレード』はそれだけに収まらない。原作を知っている人間にとっては「あの場面がこうなるのか」という驚きが連続し、初見の人間にとってはひとつの完成されたアクションRPGとして成立している。どちらの入り方でも、ミッドガルという都市の重力に引き込まれることになる。
バトルシステムは、ターン制RPGとアクションゲームの間に新しい軸を引いたような設計になっている。リアルタイムに動きながら敵の攻撃を見切り、ATBゲージが溜まったタイミングで戦略的に魔法やアビリティを選択する。この「動き続けながら考える」という構造が非常に巧みで、アクションゲームが苦手な人でも「クラシックモード」を使えばほぼATBコマンドだけで戦えるようになっている。逆にアクション寄りに楽しみたければ「アクションモード」でゴリゴリ立ち回れる。同じ戦闘を複数の難易度・スタイルで遊べる間口の広さは、このシリーズがいかに多様なプレイヤー層を意識しているかを示している。
キャラクターごとに戦闘スタイルが明確に違う点も手触りに深みを与えている。クラウドは剣を使った近接とATBのバランス型、バレットは遠距離射撃で離れた敵を削る、ティファは素早いコンボで敵を崩す——キャラクターを切り替えながら戦況を読む判断が自然と求められる。中盤以降、ボス戦でこの切り替えが機能し始めたとき、戦闘が単なる「強くなったキャラを動かす作業」ではなく「戦略的なパズル」に変わる瞬間がある。その気持ちよさはかなり独特だ。
グラフィックについては、現世代のコンソール・PC向けに再構築されたレベルのディテールが詰め込まれている。ミッドガルの上層と下層の格差、貧民街の雑多な生活感、神羅ビルの威圧感——それぞれのエリアが持つ「空気の質」が視覚的に表現されている。キャラクターの表情演技も細かく、特に会話シーンではセリフ以上のことをクラウドたちの顔が語っている。音楽は植松伸夫らの原曲を崩さず、オーケストラとロックを混在させた形でアレンジされており、戦闘・探索・ドラマそれぞれの場面で楽曲が的確に感情を増幅させる。ボス戦BGMのテンションと密度は、JRPG全体を見渡しても屈指のクオリティだ。
物語については、原作を知っていても「これは知っている話のなぞり直しではない」と感じることになるだろう。ミッドガル編という限られた舞台の中で、原作では名前だけ出てきたサブキャラクターたちが肉付けされ、新たな文脈が加わっている。神羅という巨大企業の支配構造、アバランチというレジスタンス組織の内部事情、そしてクラウドという人物の歪み——これらが単なる背景説明ではなく、ドラマとして立ち上がっている。ネタバレなしで言えば、終盤にこの作品が「リメイク」であることに対してメタ的な問いを投げかけてくる展開があり、原作ファンには衝撃的に、初見プレイヤーには謎めいた余韻として機能する。
類似作品と比べるなら、『ニーア オートマタ』や『テイルズ オブ』シリーズとは異なる位置にある。前者ほど哲学的・尖った体験ではなく、後者ほどシステムが複雑でもない。むしろ『ペルソナ5』に近い「ドラマとシステムの両立を高水準で達成したJRPG」という評価が適切で、そこにアクションの比重が増した設計が加わっている。『デビルメイクライ』系の純粋なアクションゲームよりは重く、昔ながらのターン制RPGよりは速い——そのちょうど中間を求めている人にとって、これほど合致する作品は多くない。
プレイ時間はメインストーリーだけで30〜40時間程度。サイドクエストや各チャプターのサブアクティビティ(バトルシミュレーター、ミニゲーム等)を含めると50〜60時間は軽く超える。インターグレード版では「ユフィ編」という追加DLCが含まれており、これが単体で8〜10時間あり、ストーリー上の重要な補完になっている。クリア後には「ハードモード」が解放され、アイテム使用不可という厳しい縛りで全チャプターを再攻略できる。トロフィー・実績をコンプリートしようとすると100時間を超えるボリュームになるため、やり込み勢にも十分な密度がある。
気になる点を正直に言うと、探索エリアの構造がやや線形で、オープンワールド的な自由度を期待すると窮屈に感じるかもしれない。また、本作はミッドガル編のみで完結しており、物語の全体像はシリーズ後続作(リバース等)に続く。「一本で完結した物語を楽しみたい」というプレイヤーには、エンディングの開かれた終わり方が物足りなく映る可能性がある。さらにPC版は最適化の面で発売当初に問題があったが、現在はパッチで大幅に改善されている。
こういう人に強く勧めたい——原作『FF7』への思い入れがある人、アクションとRPGのバランスを両立した作品を探している人、映画的なドラマ体験をゲームで求めている人、そしてJRPGは好きだが純粋なアクションゲームは難しいと感じている人。一方、完全オープンワールドで自由に探索したい人、一本のゲームで物語を完結させたい人、テンポの速いアクションゲームだけを求めている人には合わないかもしれない。それでも、ミッドガルという都市を歩くだけで成立してしまうほどの世界の密度は、このゲーム固有の体験として他では代替が効かない。
スクリーンショット










