1ラウンドはあっけないほど短く終わる。左右に分かれた2人が、麺のようにぐにゃぐにゃ揺れる腕から弾を撃ち合い、どちらかが倒れる。決着がつくと、負けた側だけがアップグレードのカードを引く。次のラウンドは同じマップでも同じゲームではない。弾が跳ね返るようになり、ジャンプが2回になり、ダメージを受けると回復する体になり、撃った弾が敵を追尾しはじめる。勝っている側は取れないので、リードが開くほど相手のルールブックだけが分厚くなっていく。勝負がつくころには、開始時のシンプルな撃ち合いは原形をとどめていない。Landfall の ROUNDS が売っているのは射撃の腕前ではなく、試合中にルールが書き換わっていく速度そのものだ。
負けた側だけが強くなる、という設計
Steam の公式説明は本作を「1対1のローグライト・シューティングゲーム」と呼び、「各ラウンドの負けプレイヤーは、より対抗できるビルドを作るための巧妙なアップグレードを解放できます」と説明している。ストアページが挙げる数字は65種以上のパワーアップ、70種以上のマップ、そして組み合わせとして1,120万種類以上。ローグライトの語感から想像されるような長い一周ではなく、1試合という短い単位の中でビルドが完成しては壊れる。
この、負けた側だけが強くなる構造は、公式の言葉より実際に遊んだ側の評価のほうが具体的だ。7時間プレイのレビュアーは「負けたほうが強化アイテムで強化できることで実力差も気になりにくく楽しみやすい」と書いている。34時間のレビュアーは本作を「ランダム能力+シナジー+シューティングゲーム。楽しいに決まっています。」と要約した。腕前の差をルールの偏りで埋める発想自体はマリオカートのアイテム配分などで馴染みのあるものだが、ROUNDS が違うのは、埋め合わせが速度や妨害ではなく恒久的な能力として盤面に残り、追いつかれた側もまた次の負けで別の能力を得る点にある。パーティゲームのお情けではなく、勝ち負けを交互に入れ替えながら試合を膨張させるエンジンとして機能している。
数字から読める、短いセッションの積み重ね
数字を並べると輪郭がはっきりする。2021年4月1日の発売から、Steam のレビューは44,050件、うち好評が95.24%。Steam の評価ラベルは最上位の Overwhelmingly Positive にあたる。発売から5年経った時点の同時接続は624人——ただしこれはデータ取得時点のスナップショットであって、常時この人数がいるという意味ではない。取得時点のストア表示価格は¥670(セール価格を含みうる値なので、購入前に現在の表示を確認してほしい)。
注目したいのはプレイ時間だ。レビュアーサンプルの中央値は1,069分、およそ17.8時間ある。これはレビューを書いた人だけを母集団にした中央値であって購入者全体の統計ではないが、1試合が数分で終わる作品でこの厚みが出るのは、1回の起動で長時間粘るというより、短いセッションが何度も繰り返された結果と読むほうが自然だろう。4時間プレイのレビュアーの「30分くらい2人で時間潰すとかにぴったり」という一行は、その遊ばれ方をそのまま言い当てている。17時間プレイのレビュアーは「絵面が派手で技術も出て操作も直感的にできるのでオススメです。」と、間口の広さと見栄えの良さを推している。
相手がいるかどうかで、まるで別の商品になる
ここが購入判断の核心だ。本作はオンラインPvP、共有/分割画面でのPvP、Remote Play Together、ファミリーシェアリングに対応している。誰かと遊ぶための経路は複数用意されている。問題は、その誰かのほうを店側が用意してくれないことにある。
今回参照した範囲のレビューでは、野良マッチの人口について複数の声が一致していた。17時間プレイのレビュアーは「お友達とやるゲーム。ランダムマッチもありますが、過疎気味かつマッチングすると大体猛者でボコられてまうゲームですが、友人とやるとあら不思議、神神神ゲーーームになります。」と書き、43時間プレイのレビュアーはさらに強く「野良マッチは全くマッチングしないので、運よく友達を錬成できた人は一緒にやろう。」と述べている。2人の言い分の強度には差があり(過疎気味/全くマッチングしない)、どちらも個人の観測である点は割り引く必要があるが、少なくとも、野良で相手を見つける前提では買わないほうがいいという方向では食い違っていない。22時間プレイのレビュアーの「おもしろいけど友達がいないとあんまり遊べない()」という括弧付きの自嘲も、同じ現実を別角度から映している。
裏を返せば、相手さえいれば評価は跳ね上がる。2時間プレイのレビュアーはゲームモードの少なさを挙げつつ「そういうのが気にならなくて、一緒に遊んでくれる友人がいるかたには、オススメできます。」と条件付きで推している。人数を増やしたい向きには公式外の道もあり、43時間のレビュアーは「デフォルトは1v1しかできないが、modを導入すればチーム戦やものすごい人数でのFFAなどもできるぞ!」と書いている。ただしこれは非公式 mod 前提の話で、公式サポートの範囲に入っていないことは織り込んでおきたい。同じローカル対戦帯の Stick Fight: The Game や TowerFall Ascension、Duck Game と比べると、ROUNDS はその場のドタバタだけでなく試合を通じたビルド構築という縦の蓄積を持つのが差別点で、逆に言えばパーティゲームとして5〜8人で回すには(mod なしでは)人数の口が足りない。
買う前に確かめておきたいこと
否定側のレビューは今回のサンプルでは2件しかないので傾向の断定はできないが、内容はどちらも遊びの中身ではなく環境の話だった。3時間プレイのレビュアーは「画面サイズがおかしくなって画面の端っこが見れません」「オプションからも直りません、助けてください」と表示周りの不具合を訴え、ウィンドウモードでのカーソル挙動にも触れている。0時間のレビュアーは「日本語対応とありますが、言語設定が見つかりませんでした」と書いた。2件だけの声を仕様の欠陥と断定はできないものの、画面解像度と言語表示の初期設定は、購入直後にまず確認しておくべきポイントとして扱っておくのが安全だ。動作環境は Windows と macOS、要求スペックは8GB RAM に i5-2400 相当と軽く、古いノートPCでも通しやすい。
向き先ははっきりしている。定期的に通話しながら遊ぶ相手が1人いる人、あるいは同じ部屋に座って画面を分け合える人にとって、この価格帯で得られる、毎試合ルールが書き換わっていく短時間の密度は相当に高い。実力差のある相手と遊びたいときの緩衝材としても優秀で、上手い側が勝ち続けるほど下手な側の手札が厚くなる。一方、ソロで買ってマッチング待ちに並ぶつもりなら、今回見た限りその入口は細い。競技的に上達を積み上げたい人にも、ランダムなカードが試合ごとに前提を壊す設計は噛み合いにくいだろう。2時間のレビュアーが指摘したモードの少なさも本当で、1v1という一本の柱以外に逃げ場はない。要するにこれは、ゲームを買うというより、一緒に遊ぶ相手との時間の使い方を買う商品であり、相手の当てが先にあるかどうかで価値が二極化する。












