
アクアリウムは踊らない Special Edition
The Aquarium does not dance Special Edition
開発: 橙々発売: Frontier Works Inc.¥2,200
PlayNext レビュー
水族館という舞台が、こんなにも息苦しい恐怖の箱になるとは思っていなかった。「アクアリウムは踊らない Special Edition」は、本来なら水中生物の神秘と安らぎを提供するはずの場所を、得体の知れない存在が徘徊する閉鎖空間に変えることで、独特の緊張感を生み出している。しかしこのゲームの真骨頂は、ただ怖いだけではない点にある。親友を探す少女の純粋な想いと、謎解きへの没頭感が絶妙に絡み合い、プレイヤーを最後まで画面に釘付けにする。
主人公は、恐怖で満たされた水族館の中を歩き回り、「クリーピー」と呼ばれる異形の存在から身を隠しながら、消えた友人の痕跡を辿っていく。このゲームの操作感は非常にシンプルで、複雑なボタン操作を求められることはほとんどない。移動して、調べて、考える。そのサイクルが徹底されているため、謎解きそのものの質がダイレクトに体験の深さを決める構造になっている。フルコントローラーサポートが実装されており、パッドを手に持ってソファで遊べるのも地味にありがたい。薄暗い水族館の廊下をゆっくりと進む感覚が、コントローラーの振動越しに伝わってくるような気がしてくる。
謎解きの難度は「歯ごたえがある」という表現が正確で、ちょうど良い塩梅の難しさを保っている。ノーヒントで詰まる理不尽さはほぼなく、周囲の環境やキャラクターの言動をきちんと観察していれば、論理的に答えへとたどり着けるように設計されている。「ひらめいた瞬間」の爽快感を丁寧に積み重ねる作りで、ホラー要素に気を取られながらも頭を使わされる、この二重の集中状態がプレイヤーを独特のゾーンへと引き込む。クリーピーとの遭遇も、理不尽なゲームオーバーの連続というより、「見つかりそうになる緊張感」として機能しており、ストレスよりも緊迫感の方が勝る。
ビジュアルは2Dのドット絵ベースで、インディーゲームらしい手作りの温かみと、ホラー的な不穏さが共存している。水族館という舞台の性質上、青と黒を基調とした暗いトーンが統一感を生んでいて、薄暗い水槽の青白い光が差し込む演出は思いのほか印象的だ。キャラクターのデザインも丁寧で、主人公をはじめとする少女たちはそれぞれに個性が立っており、見た目だけで人物像がある程度伝わってくる。サウンドはゲームの雰囲気を支える縁の下の力持ちで、BGMの選曲とタイミングが巧みで、静寂と音楽の切り替えが緊張のアクセントとして機能している。
物語の構造はマルチエンドを採用しており、プレイヤーの選択が結末を変える。この水族館に何が起きたのか、クリーピーとは何者なのか、友人はなぜ消えたのか——物語は最初から謎めいた問いを積み上げながら進み、プレイヤーを「知りたい」という衝動で引っ張り続ける。キャラクターたちの関係性や心理描写にも力が入っており、単なるホラー探索ゲームに終わらず、少女たちの人間ドラマとして読める厚みがある。ネタバレなしにこれ以上語るのは難しいが、エンディングを迎えたあと、しばらく余韻に浸れる種類の物語であることは保証できる。
同じくホラーアドベンチャー系のインディー作品である「Yume Nikki」や、雰囲気系ホラーの文脈に連なる国産作品と比べると、このゲームは「ホラーを怖がらせる手段として使っている」よりも「ホラーという空気の中で謎解きを楽しむ」方向性が強い。RPGツクール系ホラーが好きなプレイヤーには刺さる質感を持ちつつも、謎解き要素の比重が高い点で独自の立ち位置を確保している。海外インディーの「Omori」がRPGとホラーと感情的な物語を融合させたように、このゲームも日本的な感性でその領域を探っている印象を受ける。
プレイ時間は一周あたりおよそ3〜6時間程度と見積もられ、マルチエンドを回収するなら複数周が前提になる。選択肢によってルートが分岐するため、別エンドを見るために二周目をプレイする動機は十分にある。周回プレイでは既知の謎解きをスキップできる設計が理想的だが、二周目も最初からじっくり遊びたくなるような発見が隠れている可能性もある。価格が¥2,200であることを考えると、複数エンド込みのボリューム感はコストパフォーマンスとして納得できる水準だ。
注意点として、ホラー要素は「弱め」と説明されているが、完全にゼロではない。クリーピーの造形や特定のシーンは、ホラーに敏感なプレイヤーには不安を感じさせる可能性がある。また、謎解きが核心にある分、詰まったときの手詰まり感は人によっては辛いかもしれない。ノーヒントで突破することへのこだわりがない人は、攻略情報と並行してプレイする選択肢も持っておくと良い。
このゲームが強くおすすめできるのは、ホラー雰囲気が好きだが極端な恐怖は苦手なプレイヤー、謎解きアドベンチャーに没頭したい人、キャラクター同士の関係性や感情的なストーリーを大切にしたい人、そして国産インディーゲームの丁寧な作り込みに価値を見出せる人だ。逆に、アクション性の高いホラーを求めている人、謎解きよりもストーリーをサクサク消費したい人には物足りなさを感じるかもしれない。静かに、でも確かに心をつかむゲームを探しているなら、この水族館に足を踏み入れる価値は十分にある。
プレイヤーの声
👍プレイ時間: 6時間
個人評価は「非常に好評」の通りって感じです。全体の流れを通して7,80点。キャラ同士の掛け合いに説得力を持たせるためにもうちょっとボリュームがほしかったです。無料版でやるなら「圧倒的好評」ですね。やって損はないかなって思います。クスっと笑える場面や感動する場面のメリハリがいい具合に最後につながっているので。ジャンルは違うけれども、評価感やプレイ後の満足度的に「アンリアルライフ」と同じように感じました。
👍プレイ時間: 8時間
これをやってまず言いたいこと。早くアニメ化しろ!! 元々無料の方でもやっていましたがストーリーと世界観があまりにも好きすぎてこのゲーム自体がホントにおもしろいのにそこにキャラとベストマッチしたキャスティング!!面白くないわけがない!! 元々推しだったレトロの声がゆみりさんだったらいいなと思ってたのもあってラストで発作起こして倒れるかと思ったガチで。 あとともよさん泣きながら喋るシーンに鼻すすってる音入っててもらい泣きしそうになるからやめてください。 ホントにこの作品面白いので色んな人にやってほしい。(水族館行こ。)
👍プレイ時間: 7時間
とても素晴らしい作品でした!! フルボイスにより没入感があり、ぶっ通しでストーリーを見ました。 追加ストーリーもちゃんとフルボイスで、本編ではキャラクターの多く語られなかったキャラに対する想いが詳細に描かれ、よりキャラクターを好きになるストーリーでした。 初見からSpecial Editionでよかったなと感じれました!!!
出典: Steam ユーザーレビュー
スクリーンショット











