エイリアンに支配された地球で、人類の残存勢力が地下に潜伏しながら抵抗を続ける——『XCOM 2』はその設定だけで、前作とはまったく違う緊張感を生み出している。かつては守る側だったXCOMが、今度は追われる側として戦う。拠点は移動式の空中母艦「復讐の翼」。常に物資は足りず、時間も足りない。「勝ちにいく」のではなく「どこまで耐えられるか」という感覚が、このゲームの基調にある。1,190円という価格を考えると、そのボリュームと密度は異常なほどだ。
戦略の奥深さ——タイマーが生む緊張と判断
戦術マップでの戦闘は、ターン制のグリッドシステムで進む。兵士を物陰に移動させ、フランキングを狙い、能力を組み合わせて敵を制圧する。これ自体はターン制ストラテジーの標準的な設計だが、XCOM 2 が他と一線を画すのは「ミッションタイマー」の存在だ。多くのミッションには制限ターンがあり、慎重に進んでいれば安全、という常套手段が通用しない。時間的プレッシャーの中で不完全な情報をもとに決断を下し続けることになる。
さらに、地球全体のアドベンチャー画面ではアバタープロジェクトという別のタイマーが進行する。エイリアン側の計画が完遂される前に各地の施設を破壊しなければならない。戦術と戦略、二つの層で同時に時間と戦っている感覚が、このゲームを「思考ゲーム」から「判断ゲーム」へと変えている。
リプレイ性と新しい発見——ランダム生成が生む無数の物語
マップは毎回プロシージャル生成される。同じ都市でも、建物の配置、敵の初期位置、増援の方向が変わるため、「覚えゲー」にならない。また、兵士はレベルアップするたびにランダムなスキルセットを得る(ウォーロングDLCでさらに強化)。誰がどの専門職に育つかが予測できないため、手持ちのユニットに合わせた戦術を毎回組み立てることになる。
何周もプレイしていると、あるミッションでベテラン兵士を失ったとき、そのキャンペーン全体の空気が変わる瞬間がある。XCOM 2 はセーブ&ロードを許容するが、「その死を受け入れてキャンペーンを続ける」プレイスタイル(アイアンマンモード)を選ぶ人も多い。一人の兵士の死が戦略的敗北につながり、感情的な重みを帯びる——そういう体験が積み重なって、個人の「語れる戦争の記憶」が生まれる。
MODと拡張性——コミュニティが育てるゲーム
Steamワークショップとの統合が充実しており、数千本のMODが公開されている。UI改善から新ユニット・新ミッション・難易度調整まで、プレイヤーが自由にカスタマイズできる。公式拡張「War of the Chosen」は実質的に別ゲームと言えるほどの規模で、3体の強力な敵「選ばれし者」が追加され、ゲームの構造そのものが変わる。
MODと拡張を組み合わせることで、ベースゲームだけでは100時間で終わるものが、優に300時間以上の体験に膨らむ。ゲーム本体が「素体」であり、コミュニティとの協働でゲームが育っていく設計は、長期的な遊びを支えている。
似たゲームとの違い——何が「XCOM」を特別にするのか
ターン制ストラテジーというジャンルには、Jagged Alliance 3、Phoenix Point、Into the Breach など様々な選択肢がある。Into the Breachは完全情報ゲームに近く、パズル的な美しさがある。Phoenix Pointは自由度の高いカスタマイズが魅力だ。しかし XCOM 2 が唯一無二なのは、「キャンペーン全体を通したナラティブ」の積み上げ方にある。
個別の戦闘に勝つことより、20時間のキャンペーンを通じて語れる「自分だけの戦争」が生まれることに価値がある。名前をつけた兵士が死に、それでも地球解放を目指して戦い続ける——この体験は、ターン制ストラテジーの中でも特異な位置にある。前作『Enemy Unknown』との比較では、守る側から追われる側へというフリップが、根本的な感情の重心を変えている。
学習曲線とチュートリアル——入口の険しさを知っておく
正直に言うと、チュートリアルは薄い。カバーシステムの仕組みや、エイリアンの種類ごとの対処法は、プレイしながら体で覚えることになる。「ノーマル難易度でも詰んだ」という声は珍しくなく、序盤の数時間で挫折するプレイヤーも多い。
推奨するのは、最初の一周は「うまくやろうとしない」こと。兵士を死なせながら、敵の行動パターンを学び、失敗から戦術を修正していく。その積み重ねがあってはじめて、二周目以降の判断が研ぎ澄まれてくる。即座の達成感より「理解の喜び」を求めるプレイヤーに向いたゲームだ。リアルタイムストラテジーや、決断が早く求められるゲームに慣れた人は、最初は歯がゆさを感じるかもしれない。それを乗り越えた先に、他では得られない体験が待っている。












