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A Plague Tale: Innocence

A Plague Tale: Innocence
key visual / steam

批評

14世紀フランス、百年戦争の只中。鎧を纏った兵士たちが村を焼き、夜の野原をネズミの大群が黒い波のように覆い尽くす。A Plague Tale: Innocence はそういう世界を舞台にしている。主人公のAmiciaは戦士ではない。弓も剣も扱えない15歳の少女だ。彼女が持っているのは石投げ紐と、6歳の弟Hugoを守りたいという一心だけだ。このゲームの核心は、「無力であること」を出発点にしたサバイバルにある。多くのアクションゲームが徐々に主人公を強化し、敵を蹴散らす快感へと向かうのに対して、本作はむしろ反対方向に引っ張る。プレイヤーに「ここを切り抜けるにはどうすればいいか」を常に考えさせ、見つかったら終わりという緊張感を最後まで手放さない。

逃げることの手触り

操作そのものは平易だ。石投げ紐で兵士の注意を引き、草むらや建物の陰を伝って移動する。ステルスが基本で、敵に見つかるとあっさり捕まる。この「あっさり死ぬ」設計が本作の緊張感を作っている。

面白いのはネズミの扱い方だ。無数のネズミは生きたものを食い荒らすが、光には近づかない。松明や炎のそばには寄りつかない。つまりネズミは「壁」として機能する。篝火をつなぎ、兵士の松明を奪い、炎の道筋を組み立てながら進む——この光と闇のパズル的な構造が、ゲームプレイに一種の職人仕事的な気持ちよさをもたらす。スニークして兵士を一人倒す瞬間の手触りより、ネズミの海を渡るルートを見つけたときの「そうか、そこか」という発見の感触の方が印象に残る。

DishonoredHitman のようなステルスゲームと比べると、自由度は低い。迂回ルートの選択肢は限られており、大半のシーンには「意図された正解」に近い動線がある。ただしその分、シーンのナラティブと絡み合った設計になっていて、詰め将棋のような息苦しさより映画的な没入感に寄っている。

プレイ時間と満足感

クリアまでの時間は通常プレイで10〜13時間程度。ストーリー主導のゲームとしては適切なボリュームで、中だるみはほとんど感じない。各章ごとに環境や状況が切り替わり、廃村、城壁の内側、病院、戦場跡と、次に何が来るかという期待感が持続する。

ゲームが進むにつれ、Amiciaは錬金術を使った道具を少しずつ手に入れる。ネズミを引き寄せる薬、炎を消す薬、敵の鎧を腐食させる薬——選択肢が増えることで後半のパズルはやや複雑になるが、根本的な「弱い主人公が知恵で切り抜ける」という構造は最後まで変わらない。これが一貫したゲーム体験を作っている。

ただし、戦闘が本格化する終盤は少し調子が変わる。敵集団との対峙シーンでやや力技な設計が増え、それまでの緊密な緊張感から外れる場面がある。この落差に違和感を覚えるプレイヤーもいるだろう。

兄妹という装置

本作の最大の強みはストーリーと、それを支えるキャラクターの造形にある。AmiciaとHugoの関係が物語の中心で、序盤は互いにぎこちない距離感から始まり、章を追うごとに信頼が積み重なっていく。この変化が押しつけがましくなく、プレイヤーの行動(Hugoの手を引く、危険から先に駆けて守る)と同期して感じられるのが巧い。

ボイスアクト、顔の表情アニメーション、細かい状況への反応台詞——この層の密度が高い。川を渡るシーンでHugoが冷たいと言い、廃墟でAmiciaが弟に歌を歌い聞かせる。そういうサイドの瞬間が物語に厚みを与えている。The Last of Us との比較はよく挙がるが、本作はよりゴシックで、中世の宗教的絶望感が色彩として全体に漂っている。寄る辺のなさの質感が少し違う。

向き・不向き

人を選ぶとすれば、まずアクションゲームとして期待すると肩透かしを食う可能性がある。戦闘の爽快感より、逃げ延びる緊張感と物語の没入感が主役なので、その前提で手を伸ばした方がいい。

また鼠の描写はかなり生々しい。大量のネズミが人や動物を食い荒らすシーンが繰り返し登場するため、苦手な人には正直きついかもしれない。歴史的な残酷描写も含め、内容は重い。

価格は¥1,296と手頃で、ゲームとしての密度と完成度を考えると費用対効果は高い。続編の Requiem をプレイする前に必ず経験しておくべき作品でもある。重いテーマを丁寧に作られた物語で語る、この種のゲームが好きなら間違いなく刺さる。

プレイヤーの声

初めてステルスゲームをやりましたが、いまだにドキドキハラハラが止まりません!アミシアとユーゴの関係性が物語を通して変化していく様子が印象的です。好きな作品の一つになりました。面白く、そして悲しい物語をありがとうございました
▲ recommended·played 12h
グロテスクな表現以上に精神を消耗させる演出が非常に巧み。シナリオの鬱展開よりも「生理的嫌悪感」を刺激されるシーンが連続するので心身共に健康な時にプレイするのをおすすめします。 (集合体恐怖症を持ってる方は絶対にプレイしない方が良い。私は恐怖症持ちではないのに気分が悪くなった。ガチでやめとけ。あと犬愛好家にもおすすめしません。) アクションやステルス要素ですがカメラや全体の操作性が悪くニアミスしがちです。初見殺しや分からん殺しもぼちぼちあるので結構イライラしました。リトライがスムーズなのが良いところ。 酷評しましたが親指を上に向けます。なぜなら教養のある作品が好きだからです。
▲ recommended·played 11h
この半年後にコロナが始まるという時世的にもリアルタイム過ぎた、あらゆる意味で凄まじいゲーム。 グラフィックの美しさと世界設定からときめくオープニング。 いつまでもこの平和が続いてほしいという願いを打ち砕く怒涛の展開。 トラウマ級のネズミの群れから逃げて弟との逃走劇。これだけで病みつきだよ! ステルス&暗殺ゲームとしても秀逸でミスしてもリスタートの早さでノンストレス。 じっくり観察さえすれば道が開ける難易度も心地よく、あらゆる攻略を許容してくれる懐の広さもゲームの深さを感じさせる。傑作!!
▲ recommended·played 20h

source: steam user reviews

スクリーンショット

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