「神になる資格があるのは、あなたたちのうちひとりだけだ」——このゲームが最初に突きつけてくる事実は、冷たくて、残酷で、そして恐ろしくワクワクする。Divinity: Original Sin 2は、プレイヤーを「Source」と呼ばれる禁断の魔力を持つ「呪われた者」として描く。仲間と肩を並べて戦いながら、最終的には全員がライバルになりうる——その緊張感が、ゲーム全体を通じて静かに、しかし確実に漂い続ける。BaldurのGate 3を世に送り出したLarian Studiosが「あの傑作の前に作ったRPG」と聞けば、その密度と完成度に納得する。戦術コンバットの奥深さ、世界の作り込み、キャラクターへの愛情——すべてが本気だ。
世界の肌触り——没入感の作り方
舞台となるリヴェロンの世界は、一見すると典型的なファンタジーに見える。しかし足を踏み入れると、その精度に驚かされる。NPCたちはただ立っているのではなく、互いに会話し、プレイヤーを記憶し、プレイヤーの行動に対して感情を持って反応する。「動物と話す」スキルを取ると、道端の犬や鶏が突然会話相手になり、彼らの視点から世界の別の断面が見えてくる。死者の霊と会話するスキルを持てば、殺したばかりの敵から情報を引き出すことすら可能だ。
こうした「スキルで世界の見え方が変わる」設計が、このゲームの没入感の核にある。自分が選んだ種族やクラスによって、まったく異なる選択肢が会話に現れる。リザードは高慢に扱われ、アンデッドは顔を隠さないと村人に攻撃される。世界がプレイヤーを「ラベルで見ている」感覚は、ロールプレイの動機を強く刺激する。
戦術の手触り——コンバットという名のパズル
戦闘は、慣れるまでに何度か理不尽に感じる壁がある。だが、それはゲームが難しいのではなく、「物理演算と属性の相互作用」というシステムを理解していないだけだ、と気づく瞬間が必ず来る。
水たまりに電撃を当てると感電する。燃えている地面に油を流すと爆発する。高所から攻撃するとダメージボーナスが入り、血だまりはネクロマンサーの燃料になる。これらの要素を組み合わせると、戦場全体が「解くべきパズル」に見えてくる。「敵が多すぎて詰んだ」と思っていた局面が、油瓶一本と火矢一射で瞬殺できる——その快感は、ほかのRPGではなかなか味わえない。
似たジャンルのPillars of EternityやPathfinder: Wrath of the Righteousと比べると、リアルタイムポーズ制ではなくターン制を採用している点が大きな差異だ。「考える時間がある」という安心感が、複雑なシステムへの入り口を下げてくれる。
探索の引力——次へ進む理由
マップに「!」マークはほとんど出ない。クエストの場所も、NPCが話してくれた情報を頼りに自分で地図を読んで探すことになる。これが最初はストレスに感じるかもしれないが、慣れると「発見した」という感覚が格段に強くなる。
隠し部屋、謎の墓碑、伏線として仕込まれた手紙——世界のあちこちに、誰かが丁寧に置いていったものがある。ゲーム中盤で「序盤の何気ないNPCの発言が、実はこの巨大な陰謀の伏線だった」と気づく瞬間の鳥肌は、このゲームが持つ最大の武器のひとつだ。
また、マルチプレイ時には仲間が別の場所で同時に行動できる。片方が交渉している間にもう片方がこっそり倉庫を漁る、なんてことも可能で、協力プレイなのに「なんか怪しい動きをしてる」と笑えるシーンが生まれる。競争と協力が同じパーティ内で共存する設計は、ほかのCo-op RPGにはない独特の緊張感と笑いを生む。
学習曲線——このゲームが「人を選ぶ」理由
正直に言う。序盤のFort Joyは、かなり歯ごたえがある。チュートリアルと呼ぶには情報量が多く、最初の数時間で「自分には向いていない」と判断する人も出るだろう。スキルツリーの自由度が高すぎて、何を取るべきかわからなくなることもある。
ただ、それはゲームが「全部説明しない」という選択をしているからだ。失敗しながら覚える、仲間と相談しながら試す、そういうプロセス自体を楽しめる人向けに設計されている。ストーリーだけ楽しみたいなら難易度をExplorerに下げれば戦闘の負荷はかなり軽くなるため、コンバットへの興味度に合わせて調整が可能だ。
逆に、「考えることが好きで、世界の細部まで読みたい」というプレイヤーにとっては、このゲームは何百時間でも遊べる。¥1,245という価格でその体験が得られることを考えると、コストパフォーマンスは異常と言っていい。「長くて重いRPGを、一度ちゃんと遊んでみたい」と思っているなら、この作品はその最初の一本として最適な選択肢になりうる。












