レビュー投稿者のプレイ時間の中央値が約296.6時間。これが Stellaris という作品を一行で説明する数字だ。196,687件のレビューのうち好評は85.8%で、評価は「Very Positive」。悪くはないが、Paradox Development Studio の看板作としては圧倒的とまでは言えない。この14ポイントほどの不満がどこから来ているのかを日本語レビューで追うと、ゲームの出来そのものより「10年間更新され続けている作品を、今この瞬間に買う」という行為の特殊さに突き当たる。2016年5月9日に出たゲームが、今も同時接続9,435人を保っている。その意味を先に把握しておいたほうがいい。
探索から始まる4Xで、パラドゲーの中では最も入りやすい
Steam の説明はこの作品を、科学船でアノマリーを調査し、建設船でステーションを建て、自動生成される銀河を毎回違う形で探索していくSFグランドストラテジーとして紹介している。種族は特性・イデオロギー・進化を自分で組み、艦船デザイナーで艦隊を設計する。ジャンルはシミュレーションとストラテジー、シングルとマルチの両方に対応する。
とっつきやすさについての証言はかなり具体的だ。214時間プレイのレビュアーは「個人的に、パラドゲーのグランドストラテジーで一番簡単なゲームだと思っている。」と書き、続けて「パラドゲー入門におすすめ」と締めている。53時間のレビュアーはもっと生々しい。「HoI4を買ったけどあっちがあらゆる点でよく分からなかったので敬遠してたけど」と前置きし、「まだ分からないところも多いけども、やってくうちに慣れていくor気にしないで戦力で殴ればいいという感じで済むのが個人的には助かる」と書く。歴史の知識を前提にせず、全勢力が同じスタート地点から始まる自動生成の銀河だから、他のパラドゲーのような「開始時点で世界の構造を知っていないと話にならない」壁がない。471時間のレビュアーが「銀河英雄伝説など、宇宙で艦隊を指揮して戦いたい!という人におすすめです。」と書くのも、入口が題材の魅力そのものだからだ。824時間のレビュアーは「間違いなくお勧めのゲーム。素晴らしいBGMでプレイするとても落ち着く」と、ゲーム性ですらない部分を推している。
「別ゲーになっていく」ことをどう受け取るか
この作品固有の癖は、買った後もゲームが変わり続けることだ。1463時間のレビュアーは「10年間断続的にプレイしていますが、アップデートの度に良くも悪くも別ゲーのようになっていきます。」と書き、「信じられないと思いますが、以前は惑星ごとに食料を管理していたり、惑星許容量を官僚で増やしていた時代もありました。」と続ける。3026時間という桁違いの時間を注いだレビュアーに至っては、「今更だけどこのゲーム面白いわ」で始めた本文に追記して「評価をおすすめしないに変更したい…」と書き、それでも「でもこれまで楽しませてくれたからおすすめのままにするよ…」と票を推奨のまま残したうえで、「壊れてく…アップデートと共に俺の宇宙が壊れてく…」「もうめちゃくちゃ…」「ステラリスを辞めるタイミングだね…」と続けている。推奨の票は過去への礼であって、本人はもう降りる側に立っている。358時間のレビュアーが「Stellarisに限らず余計なことはしないでくれParadox.」と一行だけ書いて非推奨に投じているのは、同じ現象の裏面だ。
つまり不満の相当部分は、ゲームが悪いのではなく、自分が好きになったバージョンが消えることに向いている。これは長く遊ぶ人ほど強く食らう不満で、今から新規で始める人には基本的に関係がない。逆に「一度覚えた最適解を長く使い回したい」タイプには構造的に向かない。892時間のレビュアーが「DLCとバージョンアップにより生成AIを使用するようになったため、もはや遊ぶことはないでしょう…。」と離脱を宣言しているように、更新は仕様面だけでなく制作の姿勢の変化としても受け取られていて、そこに線を引く人もいる。
DLCの厚みは、面白さの層であり参入の壁でもある
もう一つ集中しているのが拡張パックの量だ。396時間のレビュアーは「ゲーム自体は好きだが、DLCが肥大化しすぎている。」としたうえで、「全てのDLC込みで購入できてるのは発売から10年間DLCを買い足し続けてる人間くらいで、途中参入と復帰のハードルが著しく高い。」と書く。高評価側でも認識は同じで、93時間のレビュアーは「宇宙版シヴィライゼーション。拡張パックをいずれ買いたいが多すぎてしり込みしている。」と正直に書いている。824時間のレビュアーの「DLCも揃えると何度でも新しい体験が出来る」という賛辞と、これは同じ事実の表と裏だ。なお本体には拡張3本とデジタル特典が同梱されている(Steam の説明による)ので、無印で始めるわけではない。
退屈だと感じる人は、はっきり退屈だと言っている
否定側で最も厳しいのは73時間のレビュアーで、「戦争、内政、外交、どれも薄っぺらく平坦で、現状では面白いゲームではありません。」と切り捨てる。研究についても「何を研究できるかはランダム!なので、戦略性が無い」と指摘し、「よって操作は忙しいのに効果は見えず常に中だるみする。。」と書く。この不満の出どころははっきりしている。この作品の研究は引ける選択肢自体が毎回変わり、効果も数%単位の積み上げが中心で、事前に一本道の最適ルートを引いて実行する快感は返ってこない。手数の対価が即座のカタルシスで払われる設計ではないのだ。
だから、逆算した最適解を精密に実行してその通り勝ちたい人には向かない。向くのは、毎回違う手札を配られて出たとこ勝負で組み立て直すのを楽しめる人、そして銀河の情景や自分の帝国の物語のほうに時間を払える人だ。97時間のレビュアーの「難易度調整をプレイヤーに丸投げしてる系ゲーム とりあえず普通に始めると終盤で試行錯誤する気も失せるレベルでボコられる」という不満も同種で、難易度と危機の強さを自分で調整して遊ぶ前提の作品だから、卓上ゲームのルールを自分で決める感覚が苦手なら合わない。242時間のレビュアーの「交易システムがものすごく面倒くさい。哨戒使いづらい。艦隊管理バグってる。」は、規模が大きくなるほど管理作業が増える4X共通の痛点で、そこを面倒と感じるか帝国経営の手応えと感じるかで評価が割れる。
買う前の実務的な注意
12時間で非推奨に投じたレビュアーが、ゲーム内容とは別の理由を書いている。「購入後数年放置していたが、ふと思い出してインストールしたが起動しなかった」「レビューを見ると、Cドライブへのインストールが必須らしい。」というものだ。本人も「レビューを見ると」「らしい」と書いているとおり伝聞で、Cドライブ必須が本当かどうかは確かめられていない。動作環境は Windows 10 64bit・メモリ4GB・ストレージ10GB とハードルは低いので、起動しない事例があるという話として受け取り、インストール先を別ドライブに寄せている環境なら起動確認を先に済ませておくくらいでいい。
総じて、1本で数百時間を吸わせる種類のゲームだ。レビュー投稿者がこの作品を遊んだ時間の中央値が296.6時間、というのがその実測値になる。次の一本を軽く挟みたいだけなら選ぶべきではないし、そのつもりで買った人が「中だるみ」と書いている。腰を据えて自分の銀河を10年単位で育てたいなら、これ以上の相手は少ない。












