28万4千件を超えるレビューの95.6%が好評、評価ラベルは最上位の「圧倒的に好評」。Respawn Entertainment が2016年に出したシューターの Ultimate Edition 版(Steam 掲載の発売日は2020年6月18日)は、数字だけ見れば疑う余地のない高評価作に見える。ところが日本語のレビューを実際に読み下していくと、賞賛と酷評がきれいに分かれる場所が一箇所だけあり、それはゲームデザインの話ではない。12時間プレイしたレビュアーは「今日キャンペーンをクリアしました」「大泣きしました」と書き、11時間プレイした別のレビュアーは「日本語版、キャンペーンでセーブも出来ない。」と書いて非推奨に票を投じている。同じゲームの、同じキャンペーンの話だ。
泣かせるキャンペーンという評判は誇張ではない
Steam の公式説明は本作をシングルプレイヤーキャンペーンとマルチプレイヤーを併せ持つ体験として紹介し、カスタマイズと進行システムによってプレイヤーと自機のタイタンが一体の止められない戦力として動くことを設計の核に掲げている。ただ、日本語レビューで繰り返し語られるのはメカの操作感より物語の後味のほうだ。26時間プレイのレビュアーは「世界観、グラフィック、ストーリー性、操作性、どれをとっても最高の作品です。」としたうえで、「自分がなぜ、数ある娯楽の中からゲームを選んだのか、再認識させてくれる体験でした。」と締めている。61時間プレイのレビュアーも「キャンペーンモード(ストーリーモード的なやつ)も クリアした時感動して泣きました」と記す。
一人称視点のロボットアクションで泣いた、という感想がこれだけ独立に並ぶのは珍しい。同時期の大作シューターがキャンペーンをマルチプレイの前座として扱いがちだった中で、本作は搭乗するタイタン BT との関係そのものを物語の駆動軸に据えた。Respawn は Call of Duty シリーズを立ち上げた開発陣が設立したスタジオであり、後に Apex Legends を同じ世界観の中で展開している。つまり本作は、シューターの物語をどこまで持っていけるかを試した、系譜の中の実験作という位置にある。41時間プレイのレビュアーが「Apexやってた人は絶対気に入るしTF2のほうがいいやんってなる。」と書くのも、この血縁を踏まえてのことだろう。
低評価の大半はゲームの中身に向いていない
見るべきはネガティブレビューの内訳だ。ゲームバランスや難易度への不満はほとんどなく、代わりに集中しているのはキャンペーンのセーブデータが保存されない不具合である。8時間プレイのレビュアーは「わざわざ3000円も出したのにストーリーモードでセーブされず6時間遊んだのに一から一生やり直します」と怒りを書き残し、2時間で離脱したレビュアーは「が、2026現在プレイしようとすると不具合が多いです」としたうえで「そういった状態なので現状ではおすすめできかねます」と結論している。高評価側でもこの問題は隠されていない。前述の26時間のレビュアーは「ただ一つ注意点として、日本語版でプレイしたからなのかセーブデータが消えることがあります。」と明記している。
原因と回避策も、プレイヤー側から共有されている。41時間のレビュアーは「※ストーリーモードのセーブはwindowsで英語名のユーザーを新しく作り、そっちでプレイすれば保存されます。」と書き、74時間のレビュアーは「Steam版タイタンフォールの設定の保存方法がやっと分かった!ドキュメントファイルを英名に変更するだけじゃ無くプロパティを開いてアドレスまで英名に変更しないと保存が出来ないことがやっと分かった!」と、自力で突き止めた手順を残している。この二人の証言は別々の場所を指している。片方は Windows のユーザー名、もう片方はドキュメントフォルダのパスだ。共通しているのは、セーブの保存先になる経路のどこかに日本語(非 ASCII 文字)が混じっていると書き込みに失敗するらしい、という点である。したがって「ユーザー名が英字だから自分は無関係」とは言い切れず、フォルダの移動やクラウド同期でパスが変わっている環境も疑う必要がある。いずれにせよ日本語環境のプレイヤーだけが集中的に踏む地雷であることは変わらない。買う前にこれを知っているかどうかで体験が真逆になる、というのがこの作品の現在地だ。
マルチプレイは死んでいない、ただし前提が違う
購入判断でもう一つ気になるのはオンラインの人口だろう。Steam の実測値では同時接続1,486人で、2016年の作品としては動いているほうだが、大作 FPS の現役タイトルと同列には語れない規模でもある。ここでレビュー側の証言が有効で、PlayStation 版から移ってきた25時間のレビュアーは「PS版で500時間ほどプレイした後マッチングに限界を感じて移住してきましたが、PC版は最高です!」「基本1分未満でマッチするのでとても快適。」と書いている。数字の小ささから想像するほどマッチングが枯れているわけではない、というのがプレイヤー側の実感らしい。ただし1,486人は特定時点のスナップショットにすぎず、時間帯や地域で体感は変わりうる。マルチプレイ目当てなら、そこは織り込んでおくべきだ。
同じレビュアーは本作の構造をこう要約している。「パイロットはハイスピードかつ立体的なカジュアルシューター。」「タイタンではアビリティや味方の位置取りを見ながら敵を削っていくタクティカルシューター。」壁走りで三次元を駆けるパイロット戦と、重量と間合いの読み合いになるタイタン戦を1試合の中で往復させる設計は、他の対戦 FPS が普通どちらか片方に寄せる部分を欲張っている。8時間プレイのレビュアーが「自分が上達していってる、というのをしっかり感じるゲームと感じました。」と書くのは、覚えることが多い分だけ伸びしろが可視化されやすい設計の裏返しでもある。
買う前に環境を確認できる人向けの一本
レビュアーサンプルのプレイ時間中央値は約10.3時間で、キャンペーンを一周する程度の長さに近い。母集団全体の統計ではないが、多数派がまず物語を通しで遊ぶ買い方をしていることは読み取れる。本稿執筆時点でストアに出ている価格は¥450(通常価格¥3,000からの大幅な値引き中で、恒久的な価格ではない)。キャンペーン目当てなら、この価格に対する満足度は数字の面でも証言の面でも高い部類に入る。
向かないのは二種類だ。一つは、環境構築のトラブルシュートを一切やりたくない人。日本語ユーザー名の回避策を自分で適用できないなら、絶賛レビューが語る体験には到達できず、8時間で「ゴミです」と書いた人と同じ側に落ちる。もう一つは、道順を明示してくれるゲームを好む人。8時間で非推奨に投じたレビュアーは「撃ち合ってて楽しいと思ってたらすぐ行先がわからなくなってうろうろする羽目になる。」と述べ、「もし買うなら詰まったらすぐプレイ動画を見て行先を確認しながらプレイすることを推奨する。」と付け加えている。壁走りで移動範囲が広い分、正規ルートを外れても進めてしまい、迷子が発生しやすい構造は実際にある。
逆に言えば、セーブ問題を先回りで潰し、多少迷っても自分で道を探すのを苦にしないなら、この作品は極めて安価な買い物になる。落とし穴が技術的で、しかも既に解法が共有されている種類のものだという事実は、購入前にそれを知っている読者にとっては障害ですらない。知らずに買った人だけが損をしている――高評価と酷評がここまで割れている理由は、ほぼそれに尽きる。











